ジョンソン新政権が誕生、閣僚は離脱強硬派が多数

(英国)

ロンドン発

2019年07月25日

7月23日に保守党の党首に選出された(2019年7月23日記事参照)ボリス・ジョンソン前外相が24日午後、エリザベス女王の任命を受け、77代目の英国首相に就任した。

ジョンソン首相は就任後に官邸前で報道陣に対し、首相として初めて演説。英国のEU離脱(ブレグジット)について、10月31日に「言い訳なしで」実現すると強調した。首相は続けて、「新たな合意、より良い合意を実現する」と明言。アイルランドと北アイルランドの国境問題をめぐるバックストップ(安全策)については、「非民主的なバックストップを伴わない、国境検査のない合意を実現できる」と主張した。

さらにジョンソン首相は、EUが再交渉を拒否する可能性も「わずかに」あるため、合意なき離脱(ノー・ディール)に備える必要もあると力説。その場合は、EUに支払うはずの清算金約390億ポンド(約5兆2,650億円、1ポンド=約135円)を経済対策などに充てるとの考えも示した。一連の発言は、EUの交渉当事者らの感情を逆なでするもので、英国内に向けたメッセージといえる。

閣僚を大幅に入れ替え

ジョンソン首相は、内閣改造にも着手した。英国では通常、与野党が入れ替わらない限り、首相が交代しても閣僚交代は小幅にとどまるが、ジョンソン新首相は大幅な入れ替えを断行。驚きの声が広がっている。

重量級ポストでは、外相兼筆頭国務相にドミニク・ラーブ前EU離脱相、内相にプリティ・パテル元国際開発相、下院院内総務にジェイコブ・リースモグ議員が就任。いずれも離脱強硬派の代表格だ。ランカスター公領相にはマイケル・ゴーブ環境相、財務相にはサジード・ジャビド内相、国際通商相にはエリザベス・トラス財務省首席政務次官の各離脱積極推進派が横滑りとなった(注)。スチーブン・バークレイEU離脱相、ジェフリー・コックス法務長官らは留任した。

穏健離脱派の主要議員では、アンバー・ラッド労働・年金相が留任(新たに女性・平等担当閣外相を兼務)し、ニッキー・モーガン元教育相がデジタル・文化・メディア・スポーツ相に返り咲くなどしたが、強硬派に比べ存在感に劣る。ブレグジットをめぐる党内対立で保守党を離党した(2019年4月2日記事参照)ニック・ボールズ議員は「極右が保守党を乗っ取った」とツイートしている。

前政権で、ノー・ディールに強く反対していたデービッド・リディントン内閣府担当相、フィリップ・ハモンド財務相、デービッド・ゴーク法相、ローリー・スチュワート国際開発相らは、ジョンソン首相の就任に先立ち、自ら辞任した。今後は一般議員の立場で、新政権を牽制する。離脱推進派でも、ペニー・モーダント国防相、リアム・フォックス国際通商相らは閣外に去った。保守党党首選挙の決選投票で敗れたジェレミー・ハント外相も、ジョンソン首相から提示された別ポストを辞退した。ジョンソン政権初の閣議は、7月25日に開催される。

(注)ジャビド財務相、トラス国際通商相は、2016年の国民投票ではEU残留を支持したが、その後は民意を支持して積極的な離脱推進に転じている。退任したハント前外相、留任したマット・ハンコック保健・ソーシャルケア相らも同じ。

(宮崎拓)

(英国)

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