ジョンソン前外相が新首相に、強硬離脱か現実路線転換か

(英国、EU)

ロンドン発

2019年07月24日

英国の与党・保守党は7月23日、テレーザ・メイ首相の後継となる新党首に、ボリス・ジョンソン前外相を選出した。ジョンソン氏は24日午後に、エリザベス女王の任命を受け、首相に就任する。

6月上旬に始まった保守党の党首選で、ジョンソン氏とジェレミー・ハント外相の2人が、党所属下院議員の投票を経て勝ち残っていた(2019年6月21日記事参照)。7月上旬から郵送で行われた党員約16万人による決選投票は22日に締め切られ、ジョンソン氏が9万2,153票を獲得。4万6,656票のハント氏をダブルスコアで下した。

ジョンソン氏は勝利後の演説で党員を前に、「われわれは10月31日までにブレグジット(英国のEU離脱)を実現する」と明言。ジョンソン氏は党首選を通じて、ブレグジットのさらなる延期を否定してきた。EUとの合意に基づく離脱が望ましいとしつつ、合意の有無にかかわらず10月31日に離脱する考えだ。

しかし、実現は容易ではない。ジョンソン氏は、アイルランドと北アイルランドの国境問題をめぐるバックストップ(安全策)に関する取り決めをEUと合意した離脱協定案から除外することを主張しているが、EUは同協定案の再交渉を繰り返し否定(2019年6月24日記事参照)。交渉を断念し、合意なき離脱(ノー・ディール)を実現しようにも、英議会が立ちはだかる。ジョンソン氏は党首選で、議会を休会させてノー・ディールに突き進む可能性を否定していなかったが、EU残留派、穏健離脱派議員らがこれに反発。北アイルランド自治をめぐる政府報告と議会審議を義務付けることで、休会を阻止する法案を上下両院で可決した。加えて、保守党が北アイルランドの民主統一党(DUP)の閣外協力で辛うじて過半数を維持している中、最大野党・労働党が新政権への不信任動議を提出すれば、保守党議員がわずかに造反するだけで、政権が立ち行かなくなる。

こうした状況から、党首選でみせた強硬路線は軌道修正し、穏健派も含めた合意形成を目指さざるを得ないとの見方もある。穏健派の重鎮の1人、アンバー・ラッド労働年金相は新党首決定に先立ち、メディアに「どちらの候補者が勝利するにせよ、(EUとの)交渉と議会対応を始めれば、彼らの主張は現実の壁にぶつかる」とコメントしている。

保守党と同時期に党首選を行っていた自由民主党は7月22日、ジョー・スウィンソン副党首を同党初の女性党首に選出した。スウィンソン氏は勝利演説で、「ブレグジットを止めるために何でもする」と宣言している。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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