G20では米中貿易摩擦や英ロ首脳会談などに注目が集まる

(英国)

ロンドン発

2019年07月04日

6月28、29日に開催されたG20大阪サミット(首脳会議)について、英国内では、米中貿易摩擦や英国・ロシア首脳会談、環境問題に注目が集まった。

主要メディアは米中貿易摩擦について、米中貿易交渉の再開が確認されたことに触れ(2019年7月1日記事参照)、G20参加国は事態の悪化に歯止めをかけたものの、具体的な解決策を見いだすに至らなかったと評価している。「フィナンシャル・タイムズ」紙(電子版7月1日)は、参加国がWTOの紛争解決制度の改革に向けた行動を取ることに合意した点など、一定の成果があったとした。一方で同紙は、保護主義という歴史的な過ちを繰り返さないことを確認した2009年のG20ロンドンサミットと比較し、同じ水準の文言が盛り込めなかった今回の首脳宣言に疑問を呈している。

英国では6月28日に行われたメイ首相とプーチン大統領の首脳会談も大きく取り上げられた。英国では2018年3月、国内でロシアの元スパイ親子の毒殺未遂事件が起こり、政府はロシアへの態度を硬化させている。首脳会談でメイ首相は、ロシアが敵対的な内政干渉やサイバー攻撃など、英国とその同盟国を脅かす無責任で2カ国関係の安定を損なう行動を慎むよう、強く求めた。

また国内では、メイ首相が温室効果ガス(GHG)の純排出をゼロにすることを他国に呼び掛けたことも注目を集めた。英国は6月に、世界で初めて2050年までにGHG純排出をゼロにするという目標を法制度化することを発表している(2019年6月13日記事参照)。

今回のG20で1つの焦点となったデジタル経済・貿易分野では、英国テクノロジー関連の業界団体テックUKが他の国際業界団体とともに、G20貿易・デジタル経済相会合(2019年6月10日記事参照)に先立ち、データの自由移動、高水準な個人情報保護基準の国際的な拡張、サイバーセキュリティーの強化、消費者保護など14の優先事項を参加国政府に提言した。「フィナンシャル・タイムズ」紙(電子版6月27日)は同会合で、人工知能(AI)や第5世代移動通信システム(5G)の新技術の発展は倫理的な課題を生む点が指摘されたことを報じ、これに対して英国政府が2018年にデータ倫理センターを立ち上げたことに触れている。

(鵜澤聡)

(英国)

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