石油・天然ガス国有企業を解体、株式公開で資金調達へ

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年07月19日

ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領は7月9日、大統領決定第4388号「石油・ガス分野の管理制度向上と財務改善、経済・住民への安定的供給に関する方法について」に署名した。政府は国有石油・天然ガス大手「ウズベクネフテガス」を上流(採掘)、中流(輸送)、下流(分配・供給)の3つに分割し、国内・国際市場で株式を公開する。

「ウズベクネフテガス」分割後、同国で主力の天然ガス産業は次のようになる。a.採掘分野は引き続き「ウズベクネフテガス」がその機能を担い、b.輸送分野(輸出入を含む)では、新しく統一オペレーターとして創設される「ウズトランスガス」が、c.分配・供給分野では、同「フードードガズタミノト」(ウズベク語で「地域ガス供給」の意)が機能を分担する。a.b.は株式の51%以上を政府(国家資産管理庁)が保有し、残りは2024年までに国内・国際市場で公開し資金を調達する。そのため、両社は2020年業績について、ISAR(注1)ガイドラインや国際財務報告基準(IFRS)、GRIスタンダード(注2)、PRMS(注3)などを導入し、業績報告書を作成する。「ウズベクネフテガス」傘下のさまざまな子会社や事業会社は上記3社に統廃合・整理され、同社が所有していた国内1,381のガソリンスタンドはオークションを経て私企業に売却される。

各事業会社には、政府が最重要とする以下の経営目標も提示された。a.「ウズベクネフテガス」に対しては、開発困難な場所での資源採掘や国家事業の入札に外国企業を誘致することなどを通じ(2019年7月9日記事参照)、2024年までに天然ガス産出量を年間423億立方メートル、液化ガス生産業を150万トンまで引き上げること、b.「ウズトランスガス」には、ガス輸送系統内の重要な地点での輸送制限要因の除去、c.「フードードガズタミノト」には、住民までの天然ガス輸送段階の損失の減少。

また大統領決定では、4月29日に採択された「2030年までの石油・天然ガス発展コンセプト」(大統領令第5712号)については、首相を長とする「共和国ワーキンググループ」を創設し、実現に向けたロードマップを作成すること、閣僚会議に対し「2020~2022年における省エネルギー向上計画」を3カ月以内に作成することが同じく指示された。

ウズベキスタンでは3月に電力分野の国営企業「ウズベクエネルゴ」の解体も決定しており(2019年7月16日記事参照)、エネルギー分野の産業構造改革が急速に進んでいる。他の分野でも大規模国営企業によるIFRS導入が順次進められており、今後、エネルギー分野に加えて企業監査ビジネス、証券・金融分野などでも市場の活性化に向け動き出すことが想定される(注4)。

(注1)国連貿易開発会議(UNCTAD)「会計と報告に関する政府間専門家作業部会(基準)」の略。

(注2)GRIは、サステナブル報告書の普及啓発とガイドラインなどの提唱を行う国際的NPO、Global Reporting Initiativeの略。GRIスタンダードはGRIが提唱する非財務的観点(環境、人権など)からの持続可能性に関する報告基準。

(注3)Petroleum Resources Management Systemの略。地下資源の埋蔵量・定義・分類に関する国際指標の1つ。

(注4)ウズベクエネルゴ、ウズベキスタン鉄道、ウズベキスタン航空、国営鉱業冶金(やきん)工場2社などもIFRS導入、株式公開に向けた検討・準備を進めている。また、ウズベクネフテガスが2020年中ごろに10億ドルのユーロ債を発行する可能性なども報じられている(ポータルサイト「カゼータ・ウズ」5月15日)。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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