米最高裁、232条関税は違憲とする訴えを却下

(米国)

ニューヨーク発

2019年06月26日

米国最高裁は6月24日、鉄鋼の輸出入協会である米国国際鉄鋼協会(AIIS)が、1962年通商拡大法232条に基づく関税の賦課は違憲だとする訴えを退けた。トランプ政権は2018年3月から同条項に基づき、鉄鋼製品には25%、アルミニウム製品には10%の追加関税を賦課している(注)。

3月25日に下された、本件の第一審に当たる国際貿易裁判所の判決では、関税賦課は合憲とされていた。通常の手続きではその後、連邦控訴裁での審理となるが、AIISはそれでは最終的な解決に時間がかかり、支払うべき関税が積み上がっていくとして、連邦控訴裁での審理を飛ばして、4月15日付で最高裁に上訴を請願していた。本件は今後、連邦控訴裁で審理される。

AIISは6月24日のプレスリリースで、最高裁の判断を遺憾として「われわれは引き続き、232条は違憲だと信じている」とコメントしている。

議会が大統領の権限を抑制する法案提出を検討

議会上院で通商を所管する財政委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党、アイオワ州)は年明け以降、232条を改革する法案を策定していることを明らかにしている。6月11日に上院財政委員会が開催した、トランプ大統領の通商政策にかかる公聴会でも、「議会は米国大統領に対して、行き過ぎた権限の委譲をしてきた」とし、議会と行政府の権限を均衡させるための法案を早期に提出したい、との意向を示した。

そうした法案の見通しについて、全米外国貿易評議会(NFTC)の会長も務めた戦略国際問題研究所(CSIS)のウィリアム・ラインシュ国際ビジネス部長はジェトロのインタビューに対して、成立の可能性は低いとの見方を示した。「共和党議員は通商政策に関して、大統領との対立を避ける姿勢で、民主党議員の多くも関税自体は支持している。かつ、上院トップのミッチ・マコーネル院内総務(共和党、ケンタッキー州)は、大統領が署名しない法案は審議しない方針だ」と現状を分析した。

他方、トランプ政権は232条による追加関税を自動車・同部品の輸入に賦課するかの判断を留保している(2019年5月20日記事参照)。通商問題に詳しいピーターソン国際経済研究所のゲイリー・ハフバウアー上席研究員はジェトロのインタビューに対して、「もしトランプ政権が自動車分野に関税をかけた場合、そうした法案が成立する可能性は少なくとも五分五分になるだろう」との見方を示した。

(注)トランプ政権はその後、鉄鋼製品については韓国、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリア、カナダ、メキシコからの輸入を、アルミニウム製品についてはアルゼンチン、オーストラリア、カナダ、メキシコを関税賦課の対象から除外した。なお、関税の適用除外申請の最新の手続きに関しては2019年6月13日記事を参照。

(磯部真一、須貝智也)

(米国)

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