ルール違反の処罰から予防へ、企業への管理監督活動の抜本改革法案を公表

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年05月23日

ロシアでは行政当局による企業活動への管理監督活動(以下、活動)が頻繁に行われ、現地企業・外国企業のビジネス展開の障害の1つとなっている。この状況の改善に向け、プーチン大統領は2月20日に行った年次教書演説で、活動の法的基盤の刷新を行うと言及(2019年2月21日記事参照)。これを受け、経済発展省は国・地方自治体による活動の一般原則を規定した法案(実施細則は別途定められる見通し)を策定し、5月16日に公表した。

活動の原則は、国民の生命・健康、国民・企業の権利・利益、動植物、環境、文化遺産、国防・安全保障などへの損失・損害の根絶と予防を目的に、ルール順守の監督と、違反があった場合の企業の摘発としている。一方、犯罪捜査、事故調査、不正競争手続き・審査、国境管理、防諜(ぼうちょう)、治安維持活動、中央銀行の指導、徴税、通貨管理、通関管理、公共調達、交通違反などには適用しないとしている。

法案は7部25章137条で構成される。a.国・地方自治体など監督当局の権限、b.活動の一般原則〔活動の正当性、監督を受ける対象者(以下、対象者)の権利保護、対象者の名誉の尊重、秘密保持、結果志向・効率性重視、客観性、公開性など〕、c.監督体制(機関のリスト化、当局間連携・調整、結果・効果の評価・報告)、d.情報管理(情報源の扱い、統一登録簿の作成)、e.リスク管理・評価(リスク算定とカテゴリー分け)、f.監督体制の参加者(検査官、対象者、証人・専門家などの第三者)、g.リスク予防措置(通知・警告、ルール順守に向けた助言、当局と対象者との相談実施、自己管理、第三者機関による監督・評価)、h.当局による監督手続き、などが記載されている。

「コメルサント」紙(5月17日)は、法案は法令違反に対して当局が処罰から違反の予防に軸足を移すものと解説。予防に向けて検査官が対象者に通知、相談・助言を行う権限が与えられ、違反が損害につながらない場合、罰金ではなく警告に置き換えるとしている。加えて、税関当局が既に運用している「リスク管理」手法(2018年5月11日付地域・分析レポート参照)の導入や、対象者による自己検査、第三者機関による活動の実施などが盛り込まれている。経済発展省のサバ・シポフ次官は「当局はより効率的で有効な活動に注力できる」と述べており、ロシアの大企業が加盟する主要ビジネス団体のロシア産業家企業家連盟(RSPP)のアレクサンドル・ショーヒン会長は「法案にはビジネス界の意見が考慮された」と評価している。

法が成立すると、一部を除いて2021年1月1日に発効するとしており、それまでに完了しなかった活動については旧法の適用を規定している。法案に対するパブリックコメントは6月13日まで受け付けている。

(齋藤寛)

(ロシア)

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