商用車大手ガズが制裁で経営難、政府支援を要請
(ロシア、米国)
欧州ロシアCIS課
2019年04月22日
ロシアの商用車大手ガズ・グループ(以下、ガズ)が米国による制裁によって経営難に陥っている。インターファクスの4月17日の報道によると、ガズの創業者兼大株主の新興財閥のオレグ・デリパスカ氏は倒産・国有化の可能性について言及した。これを受け、産業商務省はガズ支援に向けた準備を進めている。
ガズは、2018年4月6日に米国外国資産管理局(OFAC)がオレグ・デリパスカ氏を特別指定国民(SDN)リストに加えた後、制裁対象企業に含まれた(2018年4月10日記事参照)。ブルームバーグ(4月17日)によると、ガズは2018年10月にOFACに制裁解除を申請したが、現在までその条件交渉は行われていない。ガズの取引先に対する制裁は2019年7月まで猶予されているが(2019年3月7日記事参照)、ガズへの制裁の影響で既に多くの顧客・サプライヤーが離れ、制裁に巻き込まれることを嫌ったメルセデス・ベンツの軽商用車の組み立て生産もストップしているもようだ(ブルームバーグ4月17日)。
デリパスカ氏は、アルミ製造世界大手のルスアルへの制裁が解除された事例にのっとり(2019年1月29日記事参照)、ガズからの資本引き上げを検討しているが、制裁解除の可能性は見込薄との見方もある。ルスアルと違い、ガズはロシア市場を主力とする自動車メーカーで、制裁発動による世界経済への影響は大きくないとみられているためだ。ガズのワジム・ソロキン社長は3月29日、ドミトリー・コザク副首相宛てに295億ルーブル(約516億2,500万円、1ルーブル=約1.75円)の支援を要請するレターを出し、運転資本が十分でなく、キャッシュフローが赤字となっていること、2019年下半期の予想生産台数は40%減で、借入金利の支払いが滞る可能性があること、債務不履行した場合に社会的にマイナスの大きな影響が出ることなどを訴えている。
産業商務省と財務省はガズへの支援のため、同社向け融資金利補助金や、公共調達による購入支援などの財源確保に取り組んでいる(「コメルサント」紙4月18日)。
(齋藤寛)
(ロシア、米国)
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