欧州委、10月末のブレグジット期日で再々延期の可能性を否定

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年04月17日

欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は4月16日、フランス・ストラスブールで開催された欧州議会(本会議)で、前週の特別欧州理事会(EU首脳会議)の結果(2019年4月11日記事参照)を報告した。10月31日が英国のEU離脱(ブレグジット)問題をめぐる、秩序ある離脱をできる新たな期日となり、それまでに英国議会が「離脱協定」案を承認できなければ、ハードブレグジットとなるとの認識をあらためて示した。また、それまでであれば、離脱撤回についても選択肢になり得ると語った。他方、自身の欧州委員会委員長としての任期が10月31日に満了することにも触れ、同日以降の離脱期日再々延期については「作業の前提にない」との姿勢を打ち出した。

今後の展開をめぐるEU幹部のスタンスの違い鮮明

ユンケル委員長は「(英国議会が5月22日までに離脱協定案を承認できず)英国が5月23日時点でEU加盟国である場合、欧州議会選挙の実施は義務だ」と語った。それにもかかわらず、英国が欧州議会選挙を実施しない場合、「5月31日をもって離脱日の延期は終了する」と述べ、その後、合意のない離脱(ノー・ディール)に陥るリスクを示唆した。

10月31日以降の再延期に否定的なユンケル委員長に対して、もともと長期の期日延期を提案(2019年4月10日記事参照)していた欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は、前週の特別欧州理事会が英国政府の要請を上回る期日の延長を承認したことについて「(英国議会の)離脱協定案の承認、あるいはブレグジットの再検討(離脱撤回)などの選択肢を可能にする」と指摘。「自分は統合された、より良い欧州を夢みることをやめるつもりはない」と語った。また同議長は、EU・英国の双方が議論に行き詰った「ブレグジット疲れ」(2019年3月22日記事参照)の状態にあることを認めたが、「だからと言って、『もう終わりにしよう』と言ってはならない」と、今後の展開について慎重な構えをみせた。

なお、欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は同日、ツイッターを更新して、「ブレグジット問題を乗り越えて欧州の将来は続く」「ブレグジット問題によって、われわれの優先課題への取り組みが妨げられることがあってはならない」とコメントし、達観姿勢を示した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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