第1四半期のGDP成長率は6.4%と横ばい、投資の伸びが回復

(中国)

北京発

2019年04月25日

国家統計局の4月17日の発表によると、2019年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率は前年同期比6.4%となり、2018年第4四半期(6.4%)から横ばいとなった(注1、図参照)。

図 GDP成長率(四半期ベース、前年同期比)の推移

需要項目別にみると、最終消費支出(消費)の寄与率は65.1%(寄与度:4.2ポイント)となり、引き続き消費が成長を牽引した。また、外需(注2)は2017年第4四半期以来5四半期ぶりに寄与率がプラスに転じ、22.8%となった(1.5ポイント)。総固定資本形成(投資)の寄与率は12.1%だった(0.8ポイント)。

投資は、全国固定資産投資(農業を含まない)が前年同期比6.3%増となった。2018年前半に伸びの減速が目立ったインフラ投資が4.4%増となり、2018年第3四半期(3.3%増)からの回復傾向が続いた(注3)。民間投資は6.4%増、不動産開発投資は11.8%増と、2018年通年からそれぞれ2.3ポイント低下、2.3ポイント上昇した。

消費(社会消費品小売総額)は前年同期比8.3%増となり、2018年通年と比べて0.7ポイント低下した。うち、インターネット上の実物商品小売額は21.0%増で、消費の18.2%を占めた。自動車販売は3.4%減だった。

貿易総額は前年同期比1.5%減の1兆272億ドルとなった。うち輸出は1.4%増の5,517億6,000万ドル、輸入は4.8%減の4,754億5,000万ドルで、763億1,000万ドルの黒字(前年同期比57.7%増)だった。米国との貿易額は15.4%減少した(2019年4月19日記事参照)。

工業生産増加額〔付加価値ベース、年間売上高2,000万元(約3億4,000万円、1元=約17円)以上の企業が対象〕は、前年同期比6.5%増と、2018年通年から0.3ポイント上昇した。粗鋼や鋼材などが引き続き好調だった一方、金属切削機械、産業用ロボット、自動車、コンピュータ、携帯電話、集積回路などは減少した。

自動車の生産・販売動向に注目

国家統計局の毛盛勇報道官は、第1四半期の経済状況について、3月に多くの経済指標が予測を上回ったことなどを挙げつつ、「穏中有進(安定の中に進歩あり)」と評価した。その要因として、「6つの安定(雇用、金融、貿易、外資、投資、予期)」のために政府が打ち出した各種政策の効果が表れたこと、それによりPMI(購買担当者指数)の回復など企業や市場のマインドが改善したことなどを挙げた。

生産・販売がマイナスとなっている自動車については、一時的な調整期に入っているとしつつ、3月の関連指標では減少幅は縮小しているとして、一定期間後には回復するとの見通しを示した。1月に農村などにおける自動車の買い替え支援策が打ち出されているが、政府がさらなる消費促進策を策定中との報道もあり、自動車販売に関する動向が引き続き注目される(「北京商報網」4月19日)。

毛報道官は今後の経済見通しについて、4月1日から実施されている増値税率の引き下げ(2019年4月12日記事参照)や5月から実施される社会保険企業負担比率の引き下げなどの政策効果がさらに顕在化するとして、第2四半期以降の経済運営にも期待を示した。IMFも4月9日に発表した経済見通しにおいて、中国の2019年の実質GDP成長率を6.3%と予測し、前回見通しから0.1ポイント上方修正した。米中貿易の協議の進展や景気刺激策の効果を評価し、全世界や日米などの見通しを下方修正する中で、中国の見通しを引き上げた(2019年4月11日記事参照)。

一方、中国国際経済交流センターの徐洪才副総経済師は、最近の経済はポジティブではあるが、力強い反転とはいえず、経済が回復するターニングポイントには至っていない、と述べた。また、恒大経済研究院の羅志恒高級研究員も、外需の不確実性などが大きく、経済が本当に安定したか否かは第2四半期の実績をみる必要がある、として慎重な姿勢を示すなど、今後の経済動向に関する見方は別れている(「21世紀経済報道」4月18日)。

(注1)2019年第1四半期の季節調整済み前期比伸び率は1.4%と、2018年第4四半期(1.5%)から0.1ポイント低下した。

(注2)外需は、物品貿易とサービス貿易の純輸出(輸出マイナス輸入)で表される。

(注3)インフラ投資回復の背景としては、財源となる地方特別債が2019年は年初から発行され第1四半期の発行額が前年同期比9.3倍となったこと、また、国家発展改革委員会が第1四半期に審査・認可したプロジェクトの投資額が2倍となったことなどがある。

(小宮昇平)

(中国)

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