IMFの世界経済見通し、成長の弱さが鮮明に
(世界)
国際経済課
2019年04月11日
IMFは4月9日に発表した「世界経済見通し」で、2019年の世界経済の成長率(実質GDP成長率)を3.3%とし、1月の見通し(2019年1月22日記事参照)から下方修正した(表参照)。米国と中国の間の貿易紛争と関税引き上げ 、世界規模で広がる景況感の低下、主要国での金融市場の引き締め、さらには、多くの国における政策の不確実性の高まりなどを受けて、2018年上半期に3.8%と堅調に推移した世界経済成長は、2018年下半期には3.2%まで低下。経済成長の弱さは2019年まで続くとみられており、2019年(3.3%)は、2010年(5.4%)以降、最も低い水準となる見込みだ。
他方で、2019年後半から2020年にかけて成長率はある程度上昇すると見込まれている。中国の景気刺激策、世界的な金融市場心理の改善、脆弱(ぜいじゃく)な経済構造問題を抱えるアルゼンチンやトルコなど、緊張下にある新興・途上国が徐々に安定に向かっていくことなどを踏まえたものだ。
2020年の成長率は3.6%に据え置かれており、景気後退は想定されていない。しかし、見通しに対するリスクは、下振れが優勢だとする。主な下振れ要因として、(1)貿易摩擦の激化、(2)欧州・中国・米国における成長の鈍化、(3)サイバー攻撃に対する金融市場の脆弱性、(4)中東での紛争など政治的不確実性、(5)気候変動などの中長期リスクなどを挙げる。
英国の合意なきEU離脱は世界経済成長を下押し
国・地域別にみると、先進国の2019年の見通しは軒並み下方修正された。米国では政府機関の一部閉鎖などを受けて、2019年の見通しが引き下げられた。ユーロ圏、英国は2019年、2020年ともに前回予測を下回った。英国のEUからの「合意なき離脱」による関税復活はさらなる下押し要因になり、2021年の世界経済成長率は0.2%下振れすると推計された。通関手続きの混乱が伴えば、さらなる低下が見込まれる。
新興・途上国は、各国でばらつきがあるものの、2019年4.4%、2020年4.8%に下方修正されたが、5%を下回るレベルで成長率が安定化するとみられている。新興・途上国の中では、中国は2019年は6.3%へ上方修正されたが、経済成長の勢いは抑えられているとみられており、2020年は6.1%へ下方修正された。
(朝倉啓介)
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