増値税率の引き下げを実施、国家税務総局のQ&Aの確認を

(中国)

北京発

2019年04月12日

財政部、国家税務総局、税関総署は3月20日、連名で「増値税改革の深化に関連する政策についての公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公布した。増値税一般納税人(以下、納税人)を対象に、増値税率の引き下げ・調整および仕入税額の控除範囲の拡大などを定めたもので、4月1日から施行された。

主に製造業が対象となる「増値税課税販売行為もしくは貨物輸入」については、税率が従来の16%から13%に引き下げられた。また、主に交通輸送、電信、建築、不動産などのサービス業が対象となる項目については、項目によって引き下げ幅が異なるが、1~3ポイントの税率引き下げとなった(表参照)。4月1日から適用となる税率および対象となる項目の詳細は、国家税務総局のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。

また、納税人が国内旅客輸送サービス(国内の航空券、列車乗車券、バスチケットなど)を購入する場合、その仕入税額を売上税額から控除することが可能になった。輸出増値税の還付率については、現在16%が適用されている品目は13%に、10%になっているものは9%に引き下げるとしている。

このほか同公告では、農産物の仕入れに係る控除率の改定などが示された。

表 増値税の主な改定項目および税率

今回の改定の背景には、李克強首相が3月5日に「政府活動報告」で増値税の税率を引き下げる方針を示し、3月15日には4月1日から税率の引き下げを行うと発表していたことがある(2019年3月18日記事参照)。

税率引き下げの方針発表から1カ月に満たない期間で施行となったことから、引き下げに伴う各種税務処理の方法などの情報は、企業の税務担当者に十分に周知されているとは言い難く、継続的な情報収集や専門家のアドバイスを受けることが重要となる。

なお、同公告に関するQ&Aが国家税務総局の特設ポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます増値税改革の深化100問外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますQ&A1外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます3外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます4外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます5外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなど)に掲載されている。同サイトは、3月27日以降、随時更新されているため、継続的に情報の更新を確認する必要があるだろう。

このほか、国家税務総局が3月21日に公布した「増値税改革深化の関連事項に関する公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、税率改定前に発行した増値税発票について、販売の割引や中止の発生時の修正対応(赤字発票の発行、発票発行ソフトウエアの操作など)を定めている。

販売価格引き下げに踏み切る企業も

今回の増値税率の引き下げを受け、既に、自動車、スマートフォンなどの販売価格引き下げに踏み切る動きが広がっている。

「人民日報」(4月8日)によると、メルセデス・ベンツは3月15日、同日から全ての車種で価格の割引を実施し、一部の車種では割引幅が6万元(約102万円、1元=約17円)に達すると発表した。また、一汽フォルクスワーゲン・アウディは、販売している全車種の希望小売価格を引き下げ、最大引き下げ幅は5万5,000元になると発表した。さらに、自動車だけでなく、さまざまな分野の商品に価格の引き下げが広がっており、アップルのオンライン店舗でも、中国地区の商品の価格引き下げが行われた。そのうち、iPhone XSは500元、iPhone XRは300元引き下げられた。

財政部税政司の王建凡司長は、今回の増値税改革は、1兆元を超える規模の減税・コスト削減をもたらすとの認識を示した(「人民日報」3月28日)。

(藤原智生)

(中国)

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