ウクライナの外国送金受入額が過去最高、経済への影響高まる

(ウクライナ、ロシア、キルギス、タジキスタン)

欧州ロシアCIS課

2019年04月16日

世界銀行は4月8日、調査レポート「移民と送金:最近の動向と見通し」で、2018年の世界の労働移民と送金に関する動向を発表した。

欧州(注1)と中央アジア地域における低・中所得地域への2018年の外国送金額は前年比11.2%増の590億ドルだった(注2)。ロシア経済の回復が増加の原因とされている。同送金額のうち最も額が大きかったのはウクライナで、全体の4分の1を占める144億ドル(18.5%増)で、過去最高を記録した。同レポートは、ウクライナの人口4,400万人のうち500万人が労働移民として国外におり、うち120万人がポーランドで就業しているとのデータを引用している。

中央アジア地域については、受入送金額ではウズベキスタンが39億ドルで最も大きく、キルギス、タジキスタンは27億ドル、23億ドルとなった。国のGDPに占める受入送金額の割合はキルギスが33.6%、タジキスタンが31.0%を占め、世界ではトンガ(35.2%)に次ぐ依存度の高さとなっている(4位はハイチの30.7%)。キルギス、タジキスタンの労働移民は、主としてロシアで就業している。

欧州・中央アジア地域で低・中所得国への送金に係るコスト(手数料)が最も安いのはロシアで、送金額の1%前後。一方、欧州の高所得国(ドイツ、スイス)などからの送金は送金額の10%近くがコストとなっている。ロシアでは、地場最大手ズベルバンクが4月4日、中央アジアなどのCIS地域を中心に、スマートフォンを経由して送金先受取人の氏名、電話番号の入力だけで外国送金できるシステムを開始した(注3)。手数料は送金額の1%で、交換レートも優遇レートが適用されるとしている。

これらの国々については2018年の経済成長実績で消費の伸びが経済を牽引しており(2019年1月25日記事2019年3月25日記事参照)、外国送金の増加が大きな要因の1つとされている。一方、送金国(ポーランド、ロシアなど)の景気や外貨に大きく経済が依存することから、長期的視点では、世界銀行が4月5日に発表した欧州・中央アジア経済に関する改定レポートをはじめとして、国の経済構造の脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されている。

(注1)東欧、バルカン、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、コーカサス3国などが含まれる。

(注2)世界全体での低・中所得地域への送金額は5,290億ドルで、うち11.2%を欧州・中央アジア地域が占める。

(注3)受取人は、自身が所在する国の世界送受金大手ウェスタンユニオンの窓口で現金を受け取ることができる。受取人がズベルバンクに口座を開設する必要はない。

(高橋淳)

(ウクライナ、ロシア、キルギス、タジキスタン)

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