報復関税是正より圧力かけ続ける強い姿勢示す、2019年外国貿易障壁報告書(中国編)

(米国、中国)

米州課

2019年04月08日

米国通商代表部(USTR)が3月29日に発表した2019年版外国貿易障壁報告書(NTE)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、中国に関する記述は22ページで2018年より3ページ増加した。産業政策、政府調達、貿易救済措置、知的財産、サービス、農業、透明性、法的枠組みが項目として挙げられた。2018年版では独立して掲載されていたデジタル貿易は、2019年版では主にサービスに組み込まれた(注1)。

産業政策の中では、関税と化粧品の2項目が新設された。関税では、米国の鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税賦課に対する中国の報復関税について、米国は、報復関税を是正するよりも、過剰生産など根本的な原因を取り除くよう、引き続き中国に圧力をかけ続ける、と強い姿勢を示した。化粧品では、輸入品のみに対して動物実験などの検査実施や書類の提出が求められていると指摘し、中国産品と比べて差別されているとした。

農業では、園芸作物に関する項目が新設された。中国は米国産の園芸作物の市場アクセスを正当化する十分な科学的根拠などを受け取ったにもかかわらず、ジャガイモ、ブルーベリー、アボカドなどの市場アクセスを認めていないと指摘した。

2018年版で「牛肉・鶏肉・豚肉」として1つにまとめられていた食用肉が、2019年版では「鶏肉」「牛肉」「豚肉」の順で、個別の項目として掲載された。鶏肉については、米国の主要貿易相手国のうち、中国が唯一、米国産鶏肉の輸入を禁止していると指摘。禁止の理由にしている米国での鳥インフルエンザの大流行は、世界保健機関(WHO)のガイドラインにのっとって2017年に収束したと主張した。

1974年通商法301条(以下、301条)に基づく追加関税措置の主要要因の1つとなった強制技術移転については、2018年版と比べて、「301条に基づく対中制裁措置に関する調査報告書の改定版」(2018年11月29日記事参照)に関する記述が追加されたものの、その他では大きな変更はなかった。

報告書と同日に公表されたファクトシートでは、2018年から進展があった分野に、中国政府による米国産鶏肉製品(poultry broiler products)へのアンチダンピング(AD)税および相殺関税(CVD)(注2)と、中国産のコメ、小麦、トウモロコシに対する貿易取引を歪曲するような過度な国内支援が、WTOにおいて不当と見なされた点を挙げた。

デジタル貿易におけるUSTRが注視する主要障壁に、中国のサイバーセキュリティー法に基づく国境を超えるデータの移動制限とデータの現地化要求、外国企業による直接的なクラウド・コンピューティング・サービス提供の禁止、合法なウェブサイトへのフィルタリングと遮断の3点が挙げられた。

NTEは、総論編と各国・地域編から成り、総論編は2019年4月5日記事参照。

(注1)2018年版については、2018年4月4日記事参照。

(注2)米国産鶏肉に対するAD税、CVD税は2010年から賦課されていた。米国産鶏肉の輸入禁止は2015年から行われている。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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