技術移転を強制する産業政策などを問題視-2018年外国貿易障壁報告書(中国編)-

(米国、中国)

米州課

2018年04月04日

米通商代表部(USTR)が発表した2018年版外国貿易障壁報告書(NTE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、中国に関する記述は19ページで前年と同じだった。対象には、産業政策、知的財産、サービス、デジタル貿易、農業、透明性、法的枠組みなど幅広い分野が含まれた。

過剰生産、サイバーセキュリティー対策も問題視

前年から大きな変化があった分野に、USTRは、技術移転を強制する産業政策、過剰生産、サイバーセキュリティー対策の3点を挙げた。技術移転の強制では、具体的な計画として「中国製造2025」を例示し、中国で知的財産を有していない企業、中国で大規模な研究開発を行っていない企業、中国で製造していない企業に対して、財政面や規制面における特定のインセンティブの付与を拒否していると指摘した。また外国の技術を中国企業へ取り入れるため、中国は、対中投資を承認する際に不利なライセンス契約を命じるなど、幾つかの条件を課している点を問題視した。なお米国は、中国の技術移転の強制に対して、1974年通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を決定しており(2018年3月23日記事参照)、NTEにて同措置に言及している。

過剰生産については、中国政府の産業政策と財政支援が過剰生産を助長しているとともに、グローバル市場をゆがめる輸出を増加させていると指摘した。そしてこの輸出が、米国および第三国市場で、米国の生産者と労働者を害していると非難した。

サイバーセキュリティー対策については、米国を含む外国産の情報通信技術製品とサービスを、中国産に切り替えるよう制限を課している点に対して、深刻な懸念を有しているとした。自由なデータ移動の制限やデータの現地化要求も問題視している。

また、2017年と比較して新設された項目は、産業政策の中で、「中国製造2025」と再製造品の輸入禁止、農業の中で、食品安全法(2015年8月13日記事参照)と農産品(トウモロコシ、大豆)の増値税還付だった。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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