英国議会、ノー・ディール回避を可決、3度目の採決へ

(英国、EU)

ロンドン発

2019年03月14日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐるEUとの協定案について、英国議会での2度目の否決(2019年3月13日記事参照)を受け、同議会は3月13日夜(現地時間)、合意なし(ノー・ディール)で3月29日に離脱することの是非を採決し、ノー・ディール回避が賛成多数となった。

テレーザ・メイ首相は前日夜、3月29日のノー・ディールでの離脱を回避する趣旨の動議を提出していた。ところが、親EUの超党派議員が、3月29日に限らずにいつであってもノー・ディールを拒否するとの修正動議を提出。ノー・ディールという選択肢の除外はEUとの交渉力を弱めると考える政府は反対したが、賛成312票、反対308票の僅差で可決された。政府は修正後の動議にも反対したものの、議会は賛成321、反対278で再び可決。メイ首相にとって1日で2度の敗北となった。

与党・保守党のEU離脱強硬派と親EU派の修正案(2019年3月13日記事参照)は、離脱協定のほかに広範な取り決めなど存在しないとするEUの決意を無視していることなどから支持は広がらず、賛成164票、反対374票の大差で否決された。

一連の採決を受けて、メイ首相は既定方針どおり、3月14日に離脱延期の是非を議会に問うことを表明した。同時に首相は、EUに対して短期間の離脱延期を要請するには、議会が近日中にEUとのブレグジット合意案を支持することが条件と主張。合意もノー・ディールも拒否するなら長期間の離脱延期が必要となり、5月の欧州議会選挙に英国も参加する事態になると続けた。首相はこの後、3月20日までに3度目となる合意案への採決を行うことを前提にした離脱延期の動議を提出した。

離脱の撤回にもつながりかねない大幅な延期を嫌い、強硬派が支持に回る可能性もあるため、相次ぐ議会での敗北にもかかわらず、メイ首相の合意案が議会を通過する可能性が増したとの見方もある。2月中旬にはオリー・ロビンス首席交渉官が「議員は3月に再交渉後の合意案か大幅な離脱延期かの判断を迫られる」との見方を示した私的な会話も報じられていた(2019年2月15日記事参照)。

ただ、強硬派も一枚岩ではない。最後まで頑強に反対する議員も20~30人ほど存在するとみられており、3度目の採決での議会承認はなお予断を許さない。13日のノー・ディール回避の採決では、政府方針に反して棄権する閣僚らも続出。メイ首相の立場が弱いことに変わりはない。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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