メイ英首相、議会支持を失うもEUとの協議継続へ

(英国、EU)

ロンドン発

2019年02月15日

英国議会で2月14日、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる政府方針について、あらためて採決が行われた。その結果、政府が提出した動議は否決され、テレーザ・メイ首相にとって新たな痛手となった。

政府動議の内容は、「議会は、(1)2月12日のメイ首相の声明(2019年2月13日記事参照)を歓迎し、(2)1月29日に議会が意思表示したブレグジット方針(2019年1月30日記事参照)に対する支持をあらためて表明し、(3)北アイルランドのバックストップに関する英国・EU間の協議が継続していることを承知する」というもの。賛成258票、反対303票で否決された。

最大の要因は、与党・保守党のEU離脱強硬派を中心に、同党から70人近くの棄権が出たため。1月29日の議会採決では、合意なき離脱(ノー・ディール)回避を求める修正動議も可決されていたが、強硬派はノー・ディールの選択肢を封じれば、EUとの交渉を有利に進められなくなるとして問題視した。他方、バックストップに関するEUとの協議は支持している。

政府動議の採決に先立ち、労働党とスコットランド国民党(SNP)が別々に提出した2つの修正動議も採決されたが、いずれも否決された。労働党は、2月27日までにブレグジット合意案の採決を行う、もしくはEUと合意できなかったことを政府が表明し、同日中に政府が修正可能な離脱方針についての動議を提出することを要求。SNPは、離脱日を3カ月以上延期するために直ちに欧州理事会(EU首脳会議)と協議を始め、必要な法改正を進めることを求めていた。

今回の採決は法的拘束力を持たず、政府はバックストップの変更を求めてEUとの協議を続ける意向。しかし、議会の支持をもって再交渉を有利に進めたいメイ首相にとって、政府方針の否決は明らかな痛手だ。

英国では、混迷が続く中、決着は3月21~22日に予定されている欧州理事会までずれ込むとの観測も広がりつつある。民放ITVは2月12日、オリー・ロビンス英国首席交渉官が11日夜にブリュッセルにおいて「英国の議員は、再交渉後の合意案か、離脱日の大幅な延期かの判断を3月に迫られることになる」との見方を示した私的な会話を報じている。

しかし、2月27日までに行われる次の採決では、1月29日には否決された、交渉の主導権を議会が握る修正案が可決される可能性も高まるとみられる。

3月29日のEU離脱まで40日余り。メイ政権は、EU、英国議会との二正面の駆け引きを今もなお続けている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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