英国議会、ブレグジット合意案を再び否決

(英国、EU)

ロンドン発

2019年03月13日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる英国議会の2度目の採決が3月12日夜(現地時間)に行われ、英国とEUの離脱合意案は賛成242票、反対391票で再び否決された。歴史的大差で否決された1月15日の採決(2019年1月16日記事参照)より票差は縮小したが、賛成は今回も過半数には遠く及ばなかった。

採決に先立ち、ジェフリー・コックス法務長官がEUと合意した共同文書と英国単独の宣言文(2019年3月12日記事参照)に対する法的解釈を公表。アイルランド・北アイルランド間の国境管理の安全策(バックストップ)に関連し、長官は「英国が故意に永続的なバックストップに留め置かれるリスクを減少させるものの、単純に合意形成が難航した場合にバックストップから離脱する国際法上の手段を与えるものではないため、法的リスクは以前と変わらない」とする見解を示し、懸念は払拭(ふっしょく)されなかった。

閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)もこの点を問題視し、現時点では十分な進展を得られていないとする声明を発表。与党・保守党のEU離脱強硬派、欧州調査グループ(ERG)の大半も、合意案は不十分と結論付けた。結局、EU残留を支持する議員数人を含め、保守党とDUPから85人が造反。与党からはデービッド・デービス元EU離脱担当相ら約40人がテレーザ・メイ首相支持に転じたが、勢いはなかった。首相が切り崩しを狙っていた野党・労働党からの造反は3人にとどまった。

メイ首相は採決後の演説で、先に示した政府方針(2019年2月27日記事参照)に従い、合意なし(ノー・ディール)で3月29日に離脱することの是非について、3月13日に議会に諮ることを明言。ノー・ディールの場合の関税率やバックストップなどに関する方針を公表することも明らかにした。ノー・ディール時の国境管理は、EUやアイルランドも明言を避けている。

3月13日の採決に向け、議会には早くも複数の修正案が提出されている。離脱強硬派と親EU派の妥協案(2019年1月30日記事参照)を検討してきた一派は、離脱後の関税率を直ちに政府が公表し、新たな関税率導入に企業が準備する期間として、欧州議会選挙の前日となる5月22日まで離脱を延期、EUとの間で広範な現状維持の取り決めを2021年末まで確保する「管理されたノー・ディール」を提案している。

議会でノー・ディールが支持されなければ、3月14日に離脱延期についての採決が行われる。しかし、その後に何をしたいのか、議員の見解は割れたままで、混迷が終わる兆しは見えていない。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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