メイ首相、ブレグジット延期の選択肢を初めて提示

(英国、EU)

ロンドン発

2019年02月27日

テレーザ・メイ首相は2月26日、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる政府方針について議会で演説した。この中で首相は、議会がEUとの合意案を認めず、さらに合意なき離脱(ノー・ディール)も認めない場合は、3月29日とする離脱日を短期間延期することの賛否を議会に諮ると明言した。首相が離脱延期の選択肢を提示したのは初めて。

メイ首相は2月12日の政府方針演説(2019年2月13日記事参照)で、新たなブレグジット合意案に対する議会の承認が得られなければ、2月26日までに新たな政府方針を提示するとしていた。首相はこの間、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長はじめ、EU加盟各国の首脳に対して英国の考えを説明してきたと報告(2019年2月21日記事参照)。さらに、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官と英国のスチーブン・バークレイEU離脱担当相、ジェフリー・コックス法務長官らが、アイルランド・北アイルランド間のバックストップを将来置き換える代替策や、先に合意している政治宣言の文言修正などについて協議を続けていると強調した。

バックストップのほか、離脱後も労働者の権利や環境、健康、安全などに関する水準保持を確実にするための作業を続けていることも報告。これらの水準維持は、特に労働党議員らが要求していた(2019年1月22日記事参照)。

その上でメイ首相は、(1)EUとの間で続いている再協議を経た合意案に対する議会採決を3月12日までに行うこと、(2)それが否決された場合、翌13日にノー・ディールで3月29日に離脱することの是非を議会に問うこと、(3)これも議会が否決した場合は、翌14日に最長6月末までの離脱延期について採決を行い、可決されればEUに延期を要請して関連国内法を変更すること、の3点を確約した(添付資料参照)。

議会がノー・ディールでの離脱を承認する可能性は極めて低いため、メイ首相は野党や与党・保守党内の親EU派議員らが強く求めていたノー・ディール回避を事実上受け入れたことになる。しかし、離脱延期には全EU加盟国の同意が必要で、延期の期間などについて合意形成が難航する可能性もある。複数の英国メディアは2月24日、EUは短期間の延期が何の解決策にもならないと考え、2020年末まで21カ月間の延期を英国に提示する可能性があると報じている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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