メイ首相、ブレグジット新方針でEU離脱強硬派らの支持追求へ

(英国、EU)

ロンドン発

2019年01月22日

テレーザ・メイ首相は1月21日、英国議会で英国のEU離脱(ブレグジット)に関する今後の政府方針を明らかにした。EUと合意した離脱協定案が1月15日に歴史的大差で否決されたことを受けたもの(2019年1月16日記事参照)。メイ首相や政権幹部はこの間、与野党の有力議員との面会(2019年1月17日記事参照)やドイツのアンゲラ・メルケル首相らEU首脳との電話協議などを続けてきた。

メイ首相は声明の冒頭、合意なき離脱(ノー・ディール)を回避すべきという声が高まっていることに言及し、そのためにはEUとの合意内容を承認するか離脱を撤回してEUに残留するしかないと説明。EU残留は2016年の国民投票の結果に反するもので、議会はそのような行動を取るべきではないと続けた。加えて、3月29日の離脱日の延期についても、「ノー・ディールを排除することにはならず、意思決定を先延ばしするだけ」と述べ、その考えを否定した。

その上でメイ首相は、大半の議員が反発しているアイルランドと北アイルランド間のバックストップについて、最も強く反対している北アイルランドの民主統一党(DUP)ら関係議員と解決策について引き続き協議を重ね、その結果を基にEUと協議を行う考えを明らかにした。

このほかメイ首相は、今後予定されている英国・EU間の通商関係を含む将来関係の交渉について、政府が事前に議会から交渉方針に関する承認を得ること、労働基準をはじめ社会・環境に関する基準を離脱後も高い水準に維持すること、英国に居住するEU市民が今後必要になる英国居住許可を取得する際の手数料を無料にすることなどを確約した。

英国メディアや野党議員らの間では、政府の新方針は先に否決されたブレグジット合意とほとんど変わらないとの評価が大半だ。一方、離脱日の延期や恒久的な関税同盟などのソフトな離脱を否定し、バックストップの再交渉を目指すことにしたのは、与党・保守党内のEU離脱強硬派とDUPの支持を取り付け、議会通過を狙うメイ首相の意向を示している。現地報道によると、労働党議員らの支持を得て過半数を確保するため、同党が推す恒久的な関税同盟参加を追求するべきだと主張する政府幹部もいたが、そうなれば保守党が分裂すると猛反発する声がこれを上回ったもよう。他方で、労働党から一定数の造反を確保することを狙い、労働基準を保持することなども強調した。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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