ラマポーザ大統領が施政方針演説、電力公社の事業分離に言及

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2019年02月13日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は2月7日、施政方針演説(SONA)を行った。2018年2月に大統領に就任した同氏にとって2度目の演説となった(2018年2月20日記事参照)。ラマポーザ大統領は、政府が最優先で取り組むべき事項として、包括的成長と雇用創出の加速、教育システムの改善と技術習得支援、国民(特に貧困層)の生活水準の向上、汚職の撲滅、政府のキャパシティー強化、の5つを挙げた。

経済成長に関しては、政府は工業製品の輸出や業務アウトソーシングのサービス貿易の拡大などに焦点を当てるとし、具体的には縫製業の輸出加工向けの経済特別区の設立を検討しているとした。また、ラマポーザ氏は2018年10月に自身が発表した「今後5年間で1,000億ドルの対内投資を呼び込む」との目標に関し(2018年11月1日記事参照)、既に187億ドルの投資が実行に移されているとし、南アの外国投資家からの信用が回復していることと自身の就任後の実績の双方を強調した。

また、国庫の注入が続き、財政赤字拡大の要因となっている国営企業の改革に関しては、特に経営状況が悪化している電力公社エスコムの発電、送電、配電事業の分離について言及した。しかし、エスコムは4,190億ランド(約3兆3,520億円、1ランド=約8.0円)もの巨額負債を抱えており、今後も政府による金融支援は継続せざるを得ないとした上で、改革の詳細については2月20日の財務相による予算演説で発表すると述べた。また、5年ぶりに実施される国民議会選挙については、5月8日に実施する予定を明らかにした(2019年1月22日記事参照)。

今回の施政方針演説を受け、特にエスコムの事業分離に関して、市場は好意的に受け止めていると報じられたが、多くの評論家は今回発表されたエスコムの改革案や国民健康保険制度の導入に関する方法と財源確保の手段が依然として曖昧だと指摘している。また、大統領の演説後に、国内最大級の労働組合である全国鉱山労働者組合(NUM)と全国金属労働組合(NUMSA)は、エスコムの分社化による雇用喪失に関し、懸念を示した。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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