与党、総選挙に向けてマニフェストを発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2019年01月22日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は1月12日、自身が総裁を務める与党・アフリカ民族会議(ANC)のマニフェストを発表した。2019年5月に予定される国民議会の総選挙に向けて策定されたもので、議会による間接選挙で大統領が選出されるだけに、有権者に対して党の政策指針を訴える重要な文書だ。

ラマポーザ大統領は、過去25年間のANC政権の間に、住宅、インフラ、教育、医療の提供などを通じて経済規模が3倍になったと、その功績を強調。他方で、失業率が20%台後半で高止まりしている深刻な現状を踏まえ、外国投資家からの信頼回復に努めることで投資を増加させ、向こう5年間で27万5,000人の雇用を新規に創出すると述べた。一方で、2018年7月にラマポーザ大統領が「補償なし」の土地収用に向けた法案改正を進めていくと発表し、国内外で物議を醸した「土地改革」政策(主に白人所有の農地を黒人に返還する政策、2018年8月7日記事参照)については、「ANCとして(法案改正に向けた)議論を加速させていく」と言及しつつ、土地改革は憲法および経済発展、農業生産、食料安全保障の必要性に沿って行われると述べた。

第1野党の民主同盟(DA)と第2野党の経済的解放の闘士(EFF)は現時点でマニフェストは出していないが、それぞれ選挙活動を活発化させている。DAは「ANCが私たちを苦しめている」というキャッチコピーで選挙集会を全国で実施。また、有権者登録が20%前後にとどまっている若年層に登録を呼び掛けている。EFFは、2月9日にマニフェスト大決起集会を行うと発表。特に黒人貧困層を対象とした選挙活動を行っている。

有権者登録は1月27日まで。総選挙の日程は明らかになっていないが、憲法上、5月7日から90日以内に実施される。度重なる汚職問題、低迷する国内経済からANCの求心力は低下しており、直近の2016年の統一地方選では、1994年のANC政権が発足して以降最低となる53.9%の得票率にとどまった(2016年8月18日記事参照)。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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