メイ首相、ブレグジット方針の議会支持を得て最後の攻防へ

(英国、EU)

ロンドン発

2019年02月28日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる英国政府の新方針について2月27日、議会で審議と修正案の採決が行われた。EUとの再協議がまとまらず、離脱合意案の再採決が繰り返し先送りされており、政府方針と修正案の審議・採決は今回が3度目となった。

12の修正案の中から、議長権限で5つに絞られ、動議提出を取り下げた1つを除く4つが採決にかけられた。この結果、前日のテレーザ・メイ首相による新たな方針(2019年2月27日記事参照)を確実に履行することを政府に求める超党派議員の修正案が賛成502票、反対20票で可決。また、ブレグジット交渉がどのような結果になっても、在EU英国民と在英EU市民の権利を英EU双方が保障することを政府に追求させる与党・保守党議員案は全会一致で可決された。政府はいずれの修正案も支持した。

野党・労働党が提出した、EUとの恒久的関税同盟や単一市場に極めて近い関係を求める修正案は賛成240票、反対323票で否決された。スコットランド国民党が提出した、合意なき離脱(ノー・ディール)の回避を確約することを政府に求める修正案も、賛成288票、反対324票で否決された。

メイ首相はこれを踏まえ、3月12日までにブレグジット合意案の議会可決を目指し、EUとの協議に全力を注ぐ。しかし、EUは2018年11月に合意した離脱協定案の再交渉には応じないことを繰り返し明言しており、政治宣言の修正や付属文書で合意するとの見方が強まっている。英国側からはジェフリー・コックス法務長官がEUとの協議チームに加わっており、アイルランド・北アイルランド間のバックストップの修正にそれら付属文書などが確かな法的拘束力を持つか、同長官の判断も注目される。

保守党内のEU離脱強硬派は、離脱延期がブレグジットの撤回や、穏健な離脱につながることに懸念を強めつつあり(2019年2月27日記事参照)、同派の一部は政府支持に回る可能性もある。他方、2度目の国民投票実施を打ち出した労働党内には、最初の国民投票の結果を尊重すべきだと考える議員も少なくない。現在の不確実性がさらに継続することに懸念が強まる中、政府支持に回ることを検討している同党議員も少なくないとみられ、EUとの再交渉の結果次第では、同党からの合意支持が増える可能性もある。

3月29日の離脱日まで1カ月。延期の可能性も増しつつ、EUとの協議は最終局面を迎える。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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