穏健派に配慮も、ブレグジット延期は最終結論ではないと強調

(英国、EU)

ロンドン発

2019年02月27日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり、テレーザ・メイ首相が初めて離脱延期の選択肢を議会に提示(2019年2月27日記事参照)した背景には、政権内外から合意なき離脱(ノー・ディール)回避を求める圧力が一段と強まっていることがある。複数メディアによると、2月25日夜には閣僚・閣外相ら十数人がノー・ディール回避策を協議。うち複数が、メイ首相の方針転換がなければ辞任する意向も示していた。

政権外では、野党・労働党のイベット・クーパー元雇用・年金担当相や与党・保守党のオリバー・レットウィン元内閣府担当相ら超党派が、2月27日の政府方針採決に向け、交渉の主導権を議会が握る修正案を提出。修正案は、3月13日までに政府のブレグジット合意案が可決されなければ、メイ首相にノー・ディールまたは離脱延期の賛否を問う動議の提出を求めるもの。今回の首相の新方針には、修正案の内容や時間軸におおむね沿いつつ、議会に主導権を奪われることを回避する意図もうかがえる。

保守党内の離脱強硬派からは、これまでのところ目立った反発は上がっていないが、延期が離脱撤回、より穏健な離脱につながることへの警戒も強まっている。同派の代表格、ジェイコブ・リース=モグ議員はメディアに対し、「バックストップを『モルトハウス妥協案』(2019年1月30日記事参照)に変更するための延期なら評価できる」としながらも、「ブレグジットを葬り去るための延期なら、政治家にとって最悪の過ち」と述べ、政府を牽制している。

EU残留をめぐっては、労働党のジェレミー・コービン党首が2月25日夜、同党のブレグジット方針(2019年1月30日記事参照)が2月27日の修正案採決で否決されれば、2度目の国民投票を支持する意向を初めて明言。同党内では先週、コービン党首ら党執行部のブレグジット方針や反ユダヤ問題に反発する議員9人が離党。路線転換の背景には、求心力を回復したい同党首の意図もある。

メイ首相は演説の中で、英国が候補者を出さない5月の欧州議会選挙を踏まえ、EU離脱を延期するとしても、選挙後最初の欧州議会が開催されるより前の6月末まで、1回に限るべきだと主張。さらに、「最終的に判断を迫られる選択肢は変わらない。合意に基づく離脱か、ノー・ディールか、ブレグジット撤回かのいずれかだ」とも述べ、あくまで政府の合意の下で3月29日の離脱を目指す考えを強調している。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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