2018年成長率は3.0%、2019年は減収補償めぐるロシアとの交渉が影響

(ベラルーシ)

欧州ロシアCIS課

2019年01月25日

ベラルーシ国家統計委員会は1月17日、2018年の経済実績統計(速報値)を発表した。2018年のGDPは1,215億6,830万ベラルーシ・ルーブル(約6兆2,000億円、1ルーブル=約51円)で、GDP成長率は3.0%となった。同国経済は、2015年と2016年にマイナス成長を記録したが、2017年には2.4%成長に回復。2018年も前年を上回るGDP成長率となった。政府の事前予想(3.5%)、世界銀行による推定(3.4%、2019年1月9日記事参照)よりは下回った。また、単月ベースの累積では、2018年1~2月期に前年同期比5.8%増となったが、それ以降は経済成長のペースに減速傾向がみられる。

経済活動別では、GDPの21.5%を占める加工業が前年比5.4%増、10%を占める卸・小売り・輸送機器修理は5.8%増で、輸送・倉庫サービスは3.7%増、建設は4.2%増となった。一方、GDPの6.4%を占める農林水産業は4.0%減だった。加工業では、13業種のうち12業種で前年比増となり、輸送機器(14.1%増)、木材・紙加工品・印刷(13.8%増)、機械・設備(13.3%増)、基礎医薬品(8.9%増)、化学品(6.2%増)などが大きな伸びを示した。

ベラルーシの短・中期的な経済成長見通しに関し、IMFは1月17日に国別レポートを発表した。経済の回復傾向や安定したインフレ率(前年同月比5.6%、2018年12月時点)などを評価する一方で、短・中期的に存在するリスクとして、急激に増加する対外公的債務(注1)、金融分野のドル化(注2)、偏った輸出・金融構造、国有企業改革の遅れ、ロシア国内の石油関連税制改革の影響などを挙げている。

ベラルーシは、ロシアから輸出税を免除された原油を年間1,800万トン程度輸入し、国内で精製した石油製品を再輸出することで多額の税収を得ている。しかし、2018年にロシアで行われた税制改革(2023年までの段階的な輸出税から資源採掘税への切り替え(2018年9月21日記事参照)に伴い、ベラルーシは資源採掘税が付加された原油を輸入することになり、原油輸入コストと石油製品の価格上昇で国際競争力が低下して、輸出量と関税収入が減少する見込みだ(2018年12月7日記事参照)。製造業や生活コストなどにも反映されるため、IMFの試算によると2019年の段階で直接的・間接的な影響はGDPの1.5%、2023年時点で5.2%程度と見込まれている。アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、ベラルーシの減収分について、ロシアによる補償を要求している。2018年12月末には2回(25、29日)モスクワを訪問し、プーチン大統領との直接交渉に臨んだが合意には至らず、交渉継続となっている。IMFのレポートによるとベラルーシ側は2019年第1四半期におけるロシア側との交渉妥結を想定している。

(注1)IMFによると、ベラルーシの公的債務(保証を含む)は過去10年でGDPの52%に達し、うち外貨建て債務が90%を占める。

(注2)2011年以降、同国の外貨建て家計預金と銀行融資の割合と金額が大きく拡大している。

(高橋淳)

(ベラルーシ)

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