北米最新経済動向セミナー、シリコンバレーを支えるエコシステム

(米国、カナダ)

米州課

2018年12月14日

ジェトロが12月10日に東京で開催した「北米最新経済動向セミナー」報告の後編(2018年12月12日記事12月13日記事参照)。

セミナーの第2部では、北米における新産業・イノベーションの動きについて、各事務所から報告があった。まず、サンフランシスコ事務所の中沢則夫所長は、世界のイノベーションを牽引するサンフランシスコ・ベイエリアの動向を紹介した。シリコンバレーでは、コンピュータ・サイエンス分野においては創業者の6割が外国生まれで、インテル、グーグル、イーベイ、ヤフーなど成功企業の多くは移民1世による創業であること、他方、高騰する人件費や過熱する人材獲得競争を受け、テック企業が優秀な人材を求めて、コロラド州デンバーやテキサス州オースチンなど、他の都市へスピンアウトしていることなどが報告された。さらに、シリコンバレーではベンチャー企業を成功に導くエコシステムが形成されていること、失敗に対する高い許容性、先行利益を追求する徹底した即断即決主義、マーケットを意識したプロダクトの設定などのビジネススタイルが特徴で、これがシリコンバレーの強みを支えていることが報告された。

次に、ニューヨーク事務所の若松勇次長が、米国の主要都市別にみた2017年のベンチャーキャピタル投資額は、サンフランシスコ(196億ドル)を筆頭に、ニューヨーク(133億ドル)、サンノゼ(69億ドル)、ボストン(59億ドル)といずれも増加基調にあること、その中でニューヨークは、金融、ファッション、メディア、ヘルスケアなど多様な産業と豊富な人材が集積し、こうした産業分野に関連した新規ビジネス開発を目指すスタートアップ企業が増えていることを報告した。

同様に、シカゴ事務所の渡邊尚之次長は、中西部の自動車産業、ヘルスケア産業を背景に、ゼネラルモーターズ(GM)による自動運転タクシー、SPLTによる同僚との通勤ライドシェア、TEMPUSによるビッグデータと人工知能(AI)利用のがん治療法の開発が進んでいることを紹介した。

一方、トロント事務所の酒井拓司所長からは、カナダにおける新技術・ビジネスの動きとして、アセルタ・アナリティクス・ソリューションズのスマート工場では、深層学習を活用した自動車部品生産の不具合パターン認識モデルの開発が、日系自動車メーカーとも連繋しながら進んでいる事例や、トロント・ウォータールー・コリドーなどカナダの新産業スーパークラスターが紹介された。

写真 セミナー第2部の質疑応答の様子(ジェトロ撮影)

セミナー第2部の質疑応答の様子(ジェトロ撮影)

本セミナーの様子は、2019年1月11日(金)までオンデマンド配信中

(木村誠)

(米国、カナダ)

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