北米最新経済動向セミナーを開催、貿易紛争の激化がGDP押し下げの可能性

(米国、カナダ)

米州課

2018年12月12日

ジェトロは12月10日、「北米最新経済動向セミナー」を東京で開催した。基調講演では「中間選挙後の政治経済の見通し」について報告があり、その後のパネルディスカッションでは、北米7事務所が「米国の経済・通商政策によるビジネス環境の変化」と「北米における新産業・イノーベンションの動き」に関する最新情報を紹介した。セミナー内容を3回に分けて報告する。

セミナー冒頭に主催者あいさつをしたジェトロの前田茂樹理事は「トランプ政権発足(2017年1月)以来、何が起こるか分からない『予見不可能』な事態が続いている。選挙公約をかくも着実に実行すると予想していた人は少ないと思う」との見方を示した。また、「ジェトロは全米主要都市でのセミナーや知事などに対する個別面談を通じて、在米日系企業による米国内経済への貢献をアピールしている。こうした活動を通じて築いた現地関係者とのネットワークを、各社は米国に進出する際に活用してほしい」と訴えた。

基調講演では、ジェトロ・ニューヨーク事務所の畠山一成所長が、2018年11月の中間選挙の結果と、政策や米国経済の動向を取り上げた。中間選挙の結果については、下院で民主党が多数派を奪回し、上院で共和党が多数派を維持し、双方引き分け(2018年11月7日記事参照)で二極化が進んだと評価した。今後のねじれ議会で注目すべき政策分野として、まず大統領権限で進めやすい通商政策を挙げたが、特に中国に対する措置については、もはや貿易赤字解消の問題にとどまらず、安全保障にかかわる問題との見方が強く、緊張関係は長引くとみられており、投資規制、輸出管理規制の強化の動きに注視が必要とした。また、トランプ大統領の関心が高い米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、新NAFTA)実施法案の審議、通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置、自動車・同部品の調査結果の行方、中国に対する通商法301条に基づく関税賦課、日米通商問題である日米物品貿易協定(TAG)交渉を挙げた。

畠山所長は、既にトランプ大統領とナンシー・ペロシ民主党院内総務の双方が選挙後の記者会見で、連携に期待する分野としてインフラ投資、処方薬価引き下げなどを取り上げていることから、ねじれ議会において与野党間で連携が図られる可能性もあるとした。

写真 講演する畠山一成所長(ジェトロ撮影)

講演する畠山一成所長(ジェトロ撮影)

好調が続く米国経済に迫る貿易摩擦の影

米国経済については、リーマン・ショック以降、他の主要先進国と比べて、実質GDPは伸び、失業率は低下している、と説明した。現状は好調と強調しつつも、通商政策における貿易紛争の激化が、消費や投資の抑制、GDPや雇用・賃金の押し下げにつながる可能性についても触れた。

本セミナーの様子は、2019年1月11日(金)までオンデマンド配信中

(小山勲)

(米国、カナダ)

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