シカゴ地区経済は緩やかな成長続く、製造業が拡大

(米国)

シカゴ発

2018年06月08日

米連邦準備制度理事会(FRB)は5月30日、地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表した。シカゴ連銀(注)の報告によると、2018年4月から5月初めまでの経済について、引き続き緩やかな(moderate)ペースで推移したとの認識を示した。雇用や物価などのポイントは次のとおり。

  • 雇用と賃金:雇用は引き続き緩やかに拡大した。前回の報告と同様、企業には労働市場の厳しさを指摘する声があり、全ての技能水準で雇用を確保するのが難しいとの報告があった。雇用確保の困難さから、製造業や建設業では事業の遅延や辞退が発生することや、仕事がない期間であっても従業員を解雇しない企業がみられた。賃金は全体的に控えめ(modest)に上昇した。多くの企業が生産労働者の賃金上昇を報告した。
  • 物価:全体的に、物価上昇は控えめだった。多くの企業が貨物コストが劇的に上昇したと述べている。〔エネルギー価格の上昇に加え、4月1日からトラック輸送において電子ログ記録装置使用が義務化(2018年4月2日記事参照)されたことでトラック運転手の生産性低下や不足を招き、結果として価格転嫁となったと指摘する声もある(「シカゴ・トリビューン」紙2018年1月28日)〕
  • 個人消費:個人消費は控えめに増加した。企業からは、軽車両販売はわずか(slightly)に伸び、中古車売り上げは控えめだったとの報告があった。
  • 企業支出:企業支出は控えめに増加した。主な設備投資は、引き続き産業機器とIT機器の交換、改修によるものだった。
  • 建設と不動産:建設と不動産はわずかに拡大した。企業は、人件費と材料費の値上がりが利益を圧迫していると述べた。
  • 製造業:工業生産の成長率は力強く(strong)推移した。鉄鋼生産は緩やかに拡大したが、輸入は追加関税措置後に減速した。企業は、貿易政策の先行き不透明感に懸念を示している。自動車生産は控えめに増加し、堅調な水準を維持した。
  • 金融:財務状態は控えめに改善した。
  • 農業:作物分野を中心に、2018年農業収入見込みは明るい兆しがみえたものの、事業者らは国際貿易政策の衝突の可能性について懸念を指摘した。トウモロコシ価格は上昇し、大豆は下落した。牛と卵の価格が低下し、豚と乳製品の価格は上向いた。

(注)アイオワ、イリノイ北部、インディアナ北部、ウィスコンシン南部、ミシガン南部を管轄。

(仁平宏樹)

(米国)

ビジネス短信 43bf378252358ca0