東部経済回廊特別法が施行
(タイ)
バンコク発
2018年05月21日
「東部経済回廊(EEC)特別法」が5月14日付の官報に掲載され、同日施行された。タイ政府が2017年2月にEEC開発構想(注)を打ち出してから、1年以上の時間を要しての施行だ。
EEC特別法が従来の投資奨励法と異なる点は、同法律により、プラユット首相を議長とする「EEC政策委員会」がEEC開発の責任を担うことが明確化されたほか、実質的な運営部門である「EEC事務局」に対し、EEC域内への投資に関する一元的な許認可権限を付与していることだ。
同法により、EEC域内の「特別経済振興区」へ投資する外国法人や外国人には、税制上の恩典が付与される。また、この「特別経済振興区」内に限り、外国人による土地所有や外貨での金融取引が可能になるなど、既存の法令や規制に縛られない権利も外国人に与えている。外国企業にはメリットの大きい内容といえよう。
タイ政府は、EEC開発構想の下、5つの大型インフラ開発プロジェクト(2018年4月24日記事参照)を推進している。特に注目されているが、バンコク郊外のドンムアン空港、スワナプーム空港とウタパオ空港(EEC域内)を結ぶ高速鉄道計画だ。同計画については、既に企業向け公聴会が開催(2018年4月9日記事参照)され、2023年の高速鉄道開通に向けて進捗がみられる。今回のEEC特別法の施行により、これらのインフラ開発プロジェクトがさらに進展し、外国人投資家が安心してEEC域内に投資できるようになることが期待される。
他方、タイの地元住民からは、EEC開発による環境汚染や土地所有権の侵害を懸念する声が出ている。EEC特別法では、EEC開発で悪影響を受ける住民のサポートを目的とする「東部特別開発基金」が創設され、その分担金の一部をEECに投資した企業に課すことができると明記されている。同基金がどのように運用されるか、今後注視する必要がある。
(注)EECは、産業の高度化、高付加価値化を図るためのタイ政府のビジョンである「タイランド4.0」を実現すべく、タイ東部3県(ラヨーン、チョンブリ、チャチェンサオ)に、「10の重点産業」を誘致する政策。タイ政府はEEC実現のため、EECに空運、道路輸送、鉄道輸送など、交通インフラを重点的に投資する予定。「10の重点産業」とは、(1)次世代自動車、(2)スマートエレクトロニクス、(3)バイオテクノロジー、(4)(高機能で高付加価値な)食品、(5)メディカル・ウェルネスツーリズム、(6)デジタル、(7)ロボティクス、(8)航空・ロジスティクス、(9)ヘルスケア、(10)バイオ燃料・バイオ科学。
(阿部桂三)
(タイ)
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