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動き出すタイのEEC高速鉄道プロジェクト

(タイ、日本)

アジア大洋州課、企画部地域戦略班、バンコク発

2018年04月09日

タイ政府は2018年3月21日、「東部経済回廊(EEC)開発構想」に関連し、主要3空港を結ぶ高速鉄道の建設計画について、企業向け公聴会を開催した。参加した日本企業からは「民間企業が負うリスクが多く、企業が参入するには極めて厳しい条件」との評価も聞かれた。同公聴会の結果について報告する。

鉄道利用者数に政府補償はないとの説明

タイ政府は3月21日、「東部経済回廊(EEC)開発構想」の主要プロジェクトである、主要3空港間の高速鉄道建設計画に関し、民間企業向けの公聴会を開催した(注1)。同計画は、バンコク近郊の2つの国際空港(スワナプーム空港、ドンムアン空港)と、EEC内のウタパオ空港を高速鉄道で結ぶ計画だ。

公聴会でタイ政府は、PPP(官民連携)事業として同計画を進めるため、その入札手続きや、今後の入札スケジュールについて、現時点の政府案を説明した。

注目されていた、建設費用に対するタイ政府による財政支出の有無、またタイ政府と民間企業との間の費用負担割合について、タイ政府の説明は以下のとおり。

  1. 建設費用総額(見込み)2,471億200万バーツ(約8,401億円、1バーツ=約3.4円)のうち、タイ政府は約1割に相当する261億2,800万バーツのみを負担する。残る約9割に相当する2,209億7,400万バーツは、競争入札によって落札した民間企業が負担する。
  2. タイ政府による負担は、土地収用や、既存の鉄道施設の修繕・改築にかかる費用を対象とする(注2)。

タイ政府は、今回の公聴会に先だって、2月に行われた日本企業・団体との意見交換会で、「運行開始後の当初10年間は、タイ政府が運営事業者に対して補助金を支給する計画がある」という方針を示していた。しかし今回の公聴会では、こうした補助金に関する説明はなかった。

また日系企業は、以前からバンコク日本人商工会議所を通じて、「タイ政府が、鉄道開通後一定期間、利用者数補償を実施すること」を求めていた。しかし、これに対しても、タイ政府からは「実施する予定はない」との説明があった。

今後の予定、12月中に契約署名

タイ政府は、今回の公聴会を踏まえた競争入札を2018年4月中に開始する予定だ。具体的には、4~8月を入札期間とし、9~11月に入札書類の評価を行う。そして、2018年12月中に、入札企業に対するタイ政府承認と、契約署名を完了させる方針だ。なお、企業が今回の競争入札へ参加するには、以下の要件を満たす必要がある。

  1. 入札企業は、タイにおいて登記から3年以上が経過している法人であること。もしくは、3年以上経過した複数法人によるコンソーシアムであること。
  2. 入札企業の財務評価では、入札企業の純資産が450億バーツ以上であること。また複数企業による入札の場合は、代表企業の純資産が250億バーツ以上であり、かつ共同入札者(2社以内)の純資産が200億バーツ以上であること、a.1,200億バーツ以上のプロジェクトに対する基本合意書、もしくはb.1,200億バーツ以上の現金か現金同等物、もしくはc.基本合意書と、現金か現金同等物を合わせて1,200億バーツ以上拠出できること。

外資企業も、100%外資出資で、当該入札へ参加することが可能だ。しかし、同外資企業が落札した場合、その後の開発・運営に際しては、タイ資本50%以上の企業を設立する必要がある。また、申請書類は全てタイ語に翻訳して提出しなければならない。

現地日系企業は難しい条件との評価

バンコク日本人商工会議所の酒井宗二会頭は3月23日、EECを訪れた日本メディアからのインタビューに対し、「公聴会での内容をみる限り、日本企業にとって、当該鉄道建設計画への参加は厳しいだろう」との見解を示した(注3)。

その理由として、酒井会頭は「政府による利用者数補償がないほか、建設計画にかかるリスクのほとんどを民間企業が負う必要がある」ことを挙げている。

今回の高速鉄道建設計画は、EEC開発にかかる複数のインフラ計画の中で、初の大型競争入札案件となる。今回の公聴会を踏まえ、民間企業の意見がどのように入札条件書類(4月公表)に反映されるか、その内容が注目される。また今後、随時公表されるその他の大型インフラ計画についても、タイ政府による財政支出の有無や、官民のリスク負担割合がどうなるか、その動向が注目される。

(注1)タイ政府は、バンコク東部3県を「東部経済回廊(EEC)」に指定し、当該地域で、先端産業分野における外国企業による直接投資を、集中的に呼び込む計画。

(注2)現在、バンコク市内とスワナプーム国際空港の間だけは、エアポートリンクと呼ばれる高架鉄道が運行されている。

(注3)タイ政府、タイ投資委員会(BOI)、また日本アセアンセンターの招待を受け、日本の各メディアが、EECを取材するため現地を訪問していた。

(伊藤博敏、阿部桂三)

(タイ、日本)

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