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共和党議会指導部、関税賦課の適用対象の限定求める-鉄鋼とアルミ関税賦課への他国の対抗措置を警戒-

(米国)

ニューヨーク発

2018年03月12日

1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼とアルミニウムへの関税賦課に関して、共和党の議会指導部は関税賦課の対象をより限定的なものにするようトランプ大統領に求めている。国内生産コストの上昇や消費者負担の増加に加え、EUや中国などによる対抗措置や貿易紛争の激化に対する懸念が強い。

共和党の議会指導部がそろって反対

共和党の議会指導部は、メキシコとカナダに限定された適用除外を広げ(注1)、鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する関税賦課の対象をより狭めるようトランプ大統領に求めている(注2)。新たな関税による国内生産コストの上昇や、消費者負担の増加、他国からの対抗措置による米国輸出産業への影響などに対する懸念が強いためだ。

ポール・ライアン下院議長(共和党、ウィスコンシン州)は「(関税賦課に)反対だ。この決定が目的にそぐわない結果を生み出すことを危惧している」と述べた。その上で、関税賦課の対象は中国など貿易ルールを破る国や不正行為に限るべきだ、と主張している。

ミッチ・マコーネル上院多数党院内総務(共和党、ケンタッキー州)も、今回の措置が十分に対象を絞った個別限定的なものになっているか疑問が残るとし、適用対象を絞るために政権と協力していく、と語った。マコーネル議員は、選出区のケンタッキー州の企業にも影響が及ぶ可能性も示唆している。

税制を管轄する下院歳入委員会委員長のケビン・ブレイディ議員(共和党、テキサス州)も「米国の労働者に対する損害を与えずに、もともと意図しているターゲットのみに措置を適用するためには、範囲をさらに絞り込む必要がある」と述べた。ブレイディ議員は、選出区のテキサス州でのパイプライン建設に影響が出る可能性を指摘(注3)している(「フォックスニュース」電子版3月1日)。

上院財政委員会委員長のオリン・ハッチ議員(共和党、ユタ州)は「これは米国の製造業、労働者、消費者に対する増税だ。アルミニウムと鉄鋼に対してこれだけ大規模な関税を課すことは間違っている」と、大統領の決定を強い言葉で批判した。

大統領の決定を阻止しようとする動きもある。ジェフ・フレーク上院議員(共和党、アリゾナ州)は「議会は、政権が引き起こす経済的な大惨事に加担することはできない」とし、関税を無効化する法案を起案して議会に提出する考えを明らかにしている。

貿易紛争の可能性高まることに懸念

米国商工会議所は3月7日、「貿易戦争の可能性が増してきていることを強く懸念している」として、世界規模での関税賦課を控えるよう、トランプ政権に求めていた。

他方、欧州委員会は、関税が賦課されれば、WTOのセーフガード措置に基づき、対抗措置を発動する構えを示している(2018年3月9日記事参照)。欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は、今回の措置は「安全保障の措置ではなく、偽装された経済セーフガードだと理解している」と述べ、WTOのセーフガード協定に基づき、米国に対して対抗措置を取る権利がEUには与えられていると主張(注4)している(通商専門誌「インサイドUSトレード」3月8日)。

政治専門紙「ポリティコ」(3月6日)が公開した欧州委作成の対抗措置対象製品の候補リストには、鉄鋼、衣服、履物、モーターボート、オートバイ、大豆、穀物、クランベリー、オレンジジュース、バーボン・ウイスキー、葉巻・たばこなどの広範な製品が掲載されている。関税を課した場合に、EUの産業への影響が少ない品目や米国にとって政治的に重要な品目を中心にリスト化しており、対象となる品目の2017年のEUの米国からの輸入額は28億3,000万ユーロに上る。

ジャン=クロード・ユンケル欧州委員長はテレビの取材に対し、ハーレーダビッドソンのオートバイ、バーボン、リーバイスのジーンズを対抗措置の発動品目として例示している。「ポリティコ」(3月2日)は、ハーレーダビッドソンがライアン下院議長の選挙区であるウィスコンシン州で製造されており、バーボンはマコーネル上院多数党院内総務の選出区のケンタッキー州で作られていることを指摘し、欧州委は共和党議員の政治的な重要な選出区を狙い撃ちしていると報じている。

なお、トランプ大統領は、EUが対抗措置を発動すれば、EUからの自動車輸入に関税を課す、と発言している。

また、中国商務部の鍾山部長は「貿易戦争に勝者はいない」として問題解決に向けた2国間交渉の継続を米国に促す一方、「われわれはどんな挑戦にも対応できる。国と国民の利益を確固として守る」と述べた(ブルームバーグ3月11日)。

中国の鉄鋼産業は、ステンレス鋼、亜鉛メッキ板、継ぎ目なし管、石炭、農業製品、電子機器などを対抗措置の対象にするよう求めている(ロイター3月8日)。ロイター通信は、石炭が例示されたことについて、貿易紛争になれば、トランプ大統領の政治基盤にとって重要な産業に対しても対抗措置を発動していくシグナルを送ったと分析している。

メディアや有識者の間では、大豆が中国からの対抗措置の標的になるとの見方が強い。米国大豆協会(ASA)は、「大豆が報復措置の主要なターゲットになると中国政府から聞いている」として、対抗措置により中国市場が閉ざされることに強い懸念を示している。

(注1)トランプ大統領は3月9日、「オーストラリアのマルコム・ターンブル首相が公平で互恵的な軍事・貿易関係を構築することを約束した」として、同国からの輸入を関税賦課の対象外とする考えを示している。

(注2)トランプ大統領は3月8日、通商拡大法232条に基づき、鉄鋼に対して25%、アルミニウムに対して10%の輸入関税を新たに賦課することを決定した(メキシコとカナダへの適用は留保)。発表された措置の詳細については、2018年3月9日記事参照

(注3)米国の石油・ガス業界は、パイプラインや掘削装置の鉄鋼製品は海外からの特殊鋼材の輸入に依存しているとして、輸入制限によりコスト上昇や雇用への影響が出るとの懸念を表明している(2018年3月5日記事参照)。

(注4)WTOセーフガード協定第8条1項は、セーフガード措置の発動国に対して、措置により影響を受ける輸出国が被る悪影響と実質的に等価値の補償を同輸出国に提供することを求めている。また、同条2項は、輸出国との間でこの補償措置に関する合意が30日以内に成立しない場合には、輸入国は悪影響と実質的に等価値であって、WTOの物品貿易理事会が否認しない対抗措置を発動することができるとしている。

(鈴木敦)

(米国)

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