税務や通関など10項目の課題で質疑応答-広州市政府との意見交換会-

(中国)

広州発

2017年09月14日

ジェトロなどは8月22日、広州市において、現地日系企業を取り巻く事業環境の改善を目的とした市政府との意見交換会(第4回広州市政府と日本企業の投資・ビジネス環境に関する交流会)を開催した。日本側が提出した税務、通関、就労許可など10項目の要望事項について、約2時間にわたり意見交換を行った。

広州市側は日系企業の市経済の貢献を評価

在広州日本総領事館、ジェトロ、広州日本商工会の日本側3者と広州市政府との意見交換会は2013年から実施しており、今回が4回目。市政府からは杜徳清・副秘書長を筆頭に商務委員会、公安局、外国専家局など関連部門の関係者が、日本側からは総領事館、ジェトロ、日系企業の関係者らが出席した。

写真 広州市政府(右)との意見交換の様子(ジェトロ撮影)

杜副秘書長は冒頭のあいさつで、「日系企業の広州市の経済発展への貢献は非常に大きい。事業環境の改善と企業に良質なサービスを提供することは当市各部門の責務だ」とし、「本日の会合を通じ、日系企業の課題を理解し、われわれのサービスの質を高めていくとともに、両者間の協力関係を深めていきたい」と述べた。

日系企業側の主な質問事項と、これに対する広州市側の回答の概要は以下のとおり。

通関や検疫などでの効率化進めると回答

(1)環境保護税法

(問)2018年1月から中国全土で施行される環境保護税法について、広東省における細則はいつごろ発表されるのか。また、現時点で判明している点(課税対象、現状との変更点)について、具体的に教えていただきたい。

(答)環境保護条例の細則に関しては現在、パブリックコメント(意見公募)を実施中。広州市では、中央および広東省政府の指示に従い、市内における環境保護法の適用税額を試算中だ。同時に、適用税額および納税申告手続きに関して、省政府に要望を提出している。広州市では今後、環境保護条例の徴税および減免の条件や対象、広東省における税額適用基準制定の動向を注視し、随時、企業に最新情報を伝えたい。

(2)通関および検疫の簡素化

(問)広東省政府は2017年3月17日付「粤政弁[2017]21号通知」において、小売業改革の一環として、輸入食品の検疫簡素化などを打ち出したが、本通知の具体的な細則と施行時期などを教えていただきたい。

(答)通関については、申告手続きのワンストップ化、ペーパーレス化、審査手続きの標準化などを進めており、手続きにかかる時間の短縮に努めている。食品検疫に関しては、国家質量監督検験検疫総局が2016年から全国的なサンプル調査制度を展開しており、検疫体制の効率化を実現している。

(3)南沙自由貿易試験区

(問)広州市政府は南沙自由貿易試験区(南沙自貿区)の発展に注力していると聞く。企業の経済活動をさらに促進するために、南沙自貿区の進出企業に対する優遇策など新たな施策はあるか。また、同自貿区の一部地域では、交通の便が悪く住宅や教育施設の整備が遅れており、求人に対し応募が少なく従業員の採用が困難な状況だ。企業への支援策は。

(答)最近、南沙自貿区では新しい産業発展戦略を発表しており、現在ネット上でパブリックコメントを募集中だ。業種別では、イノベーション、先進製造業および建築業、水運物流業、金融サービス業、商業・貿易、現代サービス業などの発展に注力している。確かに南沙自貿区では、交通および教育の面で整備が遅れている面は否めない。今後、交通面では2,000億元(約3兆4,000億円、1元=約17円)以上を投じ、地下鉄18号線や3本の高速道路など80以上の交通インフラプロジェクトの建設を進め、広州市中心部や仏山市など周辺地域などとの交通の利便性向上を図っていく。教育面では、外国語学校や全国的に著名な学校から優秀な教員の誘致に取り組む(2015年11月17日記事参照)。

(4)ロイヤルティー課税

(問)税関総署第20号および第13号公告の施行後、中国側の輸入者が別途、輸出者に支払ったロイヤルティーを貨物の輸入価格に合算して課税価格を計算すべきと税関から指摘され、過去に遡及(そきゅう)して追徴課税されたケースが散見される。制度の運用に当たっては、課税価格にロイヤルティーを合算する根拠、調査対象となる遡及期間などを明示し、企業側の負担が過大とならないよう配慮してほしい。

(答)2016年以降に税関総署第13号および第20号公告が施行され、法令に基づき、ロイヤルティーを貨物の輸入価格に合算して課税することとなった。遡及期間については、税関法第45条により、通関した日から3年以内と定められている。なお、企業による自主返納が行われた場合、必要な手続きを経た上で、追徴金の減免が可能だ。

(5)検疫簡素化

(問)規定によると、(広州市内の)黄埔港を揚げ地港とし、貨物の目的地が番禺・花都・従化・増城となる場合、黄埔港の検験検疫局で一度検験(検査)・検疫を申告し、「入境貨物転出通知書」を取得の上、これら目的地の検験検疫局で再度検験・検疫を申告しなければならない。場合により、2社のフォワーダーに関連の手続きを依頼する必要が生じ、企業には二度手間となる。番禺・花都・従化・増城はいずれも広州市内の行政区であり、天河・越秀などと同様に貨物転出の手続きを省略し、全ての検験・検疫手続きを揚げ地港で済ませられるよう簡素化してもらいたい。

(答)まず、検験と検疫は概念上異なる。検疫は、疫病の流入を水際で防ぐために、入境港で行う検査だ。他方、検験は産品の品質に関する検査で、通関の円滑化を図るため、企業が目的地で申請する。広州市は中央政府の指示に基づき、検験と検疫の円滑化を進めており、現在は入境港または目的地のいずれかの検験検疫局で一度申告すればよい。従って、以前のように2度申告する必要はなく、入境港において検疫を行い、目的地で検験すればよい。ただ、入境港と目的地が異なる区に属する場合、入境港で検疫のほか、検験も行うと、港の倉庫に長期間貨物を保管することになる。入境港で検疫を行った後、貨物を目的地へ運び、ここで検験を行う方が、コストが安くなるのではないか。

(6)就労許可

(問)各メーカーにおいて、エンジニアなど高い技術・ノウハウを持つ年配の駐在員は当地での工場運営に欠かせない人材だ。しかし、2017年4月から施行された外国人就労許可新制度の点数基準によると、60歳以上の人材には加点がなく、合計が60点に満たずC類に分類されることもある。また、B類に認定されるには60歳未満であることが条件だが、広州市では62歳程度までは引き続き就労許可証を取得できると聞く。日本の労働人口の高齢化を踏まえると、条件を2年程度緩和してもらっても、年配者の就労制限により工場運営に支障を来す日系企業は少なくない。新制度の運用に当たっては、当地での企業活動に支障が生じないよう、こうした点も考慮してほしい(2017年8月16日記事参照)。

(答)まず、申請者はA~Cの各分類基準を満たすかを確認すること。もし同分類に合致すれば、点数基準は適用されない。中国における法定の退職年齢は60歳だ。これに倣い、B類の認定条件を60歳未満としており、62歳でも就労許可証を取得できるとは明示していない。ただし、A類の高級人材には、60歳の年齢制限は適用されない。

このほか、広州日本人学校の賃料や市内の道路渋滞などについて、意見交換が行われた。

(粕谷修司、黄冬瑩)

(中国)

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