追加関税措置を撤廃、経済に回復の兆し
(エクアドル)
ボゴタ発
2017年06月23日
国際収支防衛のために導入されていた追加関税措置が、6月1日に撤廃となった。エクアドル税関によると、追加関税による歳入は16億ドルに上った。2016年4月の大地震で経済が大きな打撃を受けたとして、同措置の適用期間は1年延長されていた。中央銀行は経済状況が改善されてきているとして、2017年の実質GDP成長率見通しを1.4%としている。
国際収支防衛のために導入、1年延長
2000年以降、米ドルを法定通貨とするドル化政策を採用しているエクアドルでは、近年のドル高によりコロンビアやペルーなど周辺国との間で輸出競争力に差が生じている。さらには、主要輸出産品である原油の国際価格低下も相まって輸出が大きく落ち込み、国際収支が危機的な状況に陥っていたのを受け、政府は2015年3月、国際収支防衛のための一時的輸入制限措置である追加関税措置を導入し、2016年6月までの間、例外品を除く全ての輸入品に対し5~45%の追加関税を課すことを発表した(2015年3月20日記事参照)。
その後はWTOに通知していた段階的削減プログラムに基づき、2016年2月に45%の追加関税が課されている品目の税率を40%に引き下げ、4月には5%の追加関税を撤廃した。しかし政府は、4月16日に北部沿岸を襲った大地震が輸出産業に大打撃を与えたことを理由に適用期間の1年延長を決定し、最終撤廃期限を2017年6月とした(2016年7月4日記事参照)。
2015年以降6回にわたり開催されたWTOの国際収支(BOP)委員会では、エクアドル政府の措置について賛否があったが、2017年4月にエクアドル政府は追加関税の段階的削減と6月撤廃を順守する旨を通知し、委員会もこれを受け入れ、2,152品目に適用されていた追加関税が撤廃された。
2016年の貿易収支は一転黒字に
2016年のエクアドルの貿易収支は、輸入が前年比24.0%減少したことが影響して、12億4,700万ドルの黒字となり、2015年の21億3,000万ドルの赤字から一転、大幅に改善した(表1参照)。産油国のエクアドルは、輸出の大半を石油が占めている。2014年6月以降の原油価格の下落は、エクアドル経済に深刻な打撃を与え貿易収支の悪化に直結した。石油輸出の推移をみると、2014年の2,206万トン(132億7,600万ドル)から、2015年は2,216万トン(66億6,000万ドル)、2016年は2,208万トン(54億5,900万ドル)と、輸出量はほとんど変わらないのに輸出額が大幅に減少している(表2参照)。
項目 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | |
---|---|---|---|---|
金額 | 前年比 | |||
収支 | △ 723 | △ 2,130 | 1,247 | ― |
輸出 | 25,724 | 18,331 | 16,798 | △ 8.4 |
輸入 | 26,448 | 20,460 | 15,551 | △ 24.0 |
(注)輸出、輸入ともにFOB金額。
(出所)エクアドル中央銀行
品目 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
数量 | 金額 | 数量 | 金額 | 数量 | 金額 | 前年比 | |
石油 | 22,057 | 13,276 | 22,156 | 6,660 | 22,079 | 5,459 | △ 18.0 |
原油 | 21,631 | 13,016 | 21,226 | 6,355 | 20,218 | 5,054 | △ 20.5 |
派生品 | 426 | 260 | 930 | 305 | 1,861 | 405 | 32.8 |
非石油 | 9,350 | 12,449 | 9,523 | 11,670 | 9,863 | 11,339 | △ 2.8 |
伝統産品 | 6,594 | 6,276 | 6,961 | 6,304 | 6,884 | 6,457 | 2.4 |
バナナ、食用バナナ | 5,948 | 2,577 | 6,268 | 2,808 | 6,166 | 2,734 | △ 2.6 |
エビ | 297 | 2,514 | 342 | 2,280 | 371 | 2,580 | 13.2 |
その他 | 349 | 1,185 | 351 | 1,217 | 347 | 1,143 | △ 6.1 |
非伝統産品 | 2,756 | 6,173 | 2,561 | 5,366 | 2,979 | 4,881 | △ 9.0 |
魚の缶詰 | 278 | 1,262 | 261 | 952 | 250 | 910 | △ 4.4 |
花 | 165 | 918 | 146 | 820 | 143 | 803 | △ 2.1 |
その他 | 2,313 | 3,993 | 2,154 | 3,594 | 2,586 | 3,169 | △ 11.8 |
全体 | 31,407 | 25,724 | 31,679 | 18,331 | 31,942 | 16,798 | △ 8.4 |
(注)金額はFOB。
(出所)エクアドル中央銀行
しかし、2016年2月以降、原油価格は緩やかな上昇傾向にあり、12月には1バレル当たり44.2ドルと前年同期(26.8ドル)と比べ64.8%上昇した。2014年の90ドル台には程遠いが、エクアドル経済は回復の兆しをみせ始めている。2016年の四半期ごとの実質GDP成長率も、第1四半期は前年同期比マイナス4.0%と少なくとも2001年以降最低を記録したが、第2四半期マイナス2.1%、第3四半期マイナス1.2%、第4四半期プラス1.5%と回復傾向にある。前期比でみると第1四半期はマイナス1.7%と落ち込んだが、第2四半期以降は0.8%、0.7%、1.7%とプラス成長が続いている。エクアドル中央銀行は、2017年の実質GDP成長率の見通しを1.4%としている(IMFはマイナス1.6%、世界銀行はマイナス1.3%)。
5月に就任したばかりのレニン・モレノ大統領は、幅広い魅力を持つ一次産品の輸出は続けるが、同時に高付加価値の工業製品の輸出を強化する方針を発表している。原油価格の回復を追い風に、効率的で持続可能な経済を実現できるか、その手腕が注目されている。
(茗荷谷奏)
(エクアドル)
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