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国際収支防衛のため輸入制限措置を導入−品目に応じて5〜45%の追加関税、適用期間は15ヵ月−

(エクアドル)

中南米課

2015年03月20日

貿易省、農牧漁業省、産業生産省、経済財務省、企画開発庁の代表らからなる貿易委員会は3月6日、2015年決議011号を採択し、例外品目を除く全ての輸入品に対し、3月11日から5〜45%の追加関税を課すことを発表した。貿易委員会は追加関税について、GATTの規定に基づく国際収支防衛のための一時的輸入制限措置だとし、適用期間は15ヵ月間としている。

<GATT第18条Bに基づく措置と主張>
GATT第12条および第18条Bは、加盟国が自国の貨幣準備の著しい減少の脅威を予防するため、またはそのような減少の阻止のため、輸入制限措置を導入することを認めている。第12条は全加盟国が適用可能だが、第18条Bは開発途上国のみが適用できる。エクアドルは第18条Bによる適用を主張している(決議011号前文)が、GATT第15条2項の規定により、その適用のためには当該国がWTOの国際収支上の目的のための制限(BOP)委員会およびIMFと協議し、国際収支上の困難についてはIMFがそれを認める必要がある。

決議011号はその前文において、経済政策調整省が3月4日付でエクアドルの国際収支の不均衡の存在を証明し、15ヵ月間の期間限定で輸入水準をコントロールする対策を取ることを要請したとしている。そして、経済政策調整省、貿易省、農牧漁業省など多省庁で形成される調査グループが国際収支の安定を保つための追加関税の水準を策定したという。

具体的には、品目に応じて5%、15%、25%、45%の追加関税を一般関税率や各種貿易協定などの取り決めに基づく特恵関税率に加える。例えば、一般関税率が30%の排気量250cc超500cc以下のオートバイは、追加関税45%が加わり75%となる(表参照)。なお、個人衛生・家庭用品、医薬品・医療機器や部品・原材料など国民生活や国内の生産活動に影響を及ぼす品目については、追加関税の適用除外となっている。適用除外品目はエクアドルの現行輸入額の68%に相当する(貿易委員会のプレスリリース3月6日)。具体的な品目別の追加関税率については、貿易委員会のウェブサイト〔HS01類〜62類HS62類(途中)〜97類〕を参照のこと。

追加関税の分野別税率と適用除外分野

なお、今回の追加関税は、エクアドルとの間で自由貿易協定(FTA)など特恵貿易協定を締結している国の産品にも適用される。例えば、コロンビアやペルーなどはエクアドルとアンデス共同体(CAN)を形成しており、大半の品目が関税ゼロとなっているが、追加関税は適用される。ただし、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)代表者委員会決議第70号の第2条に基づき、ALADI加盟国のうち低開発国に分類されるパラグアイとボリビアに対しては追加関税は適用されない。3月11日以前に船積みされた貨物、国際協力により他国政府やNGOにより提供される物品、旅具なども追加関税の適用外だ。

<隣国との為替レートの格差が背景に>
今回の措置の背景には、1月5日から3月11日まで適用されていたCANの枠組みに基づくペルー、コロンビア向け産品に対する一時的追加関税措置の適用がある。

CANの決議563号(通称カルタヘナ協定)の第98条は、ある加盟国の通貨の減価により加盟国間の競争条件に大きな変化が生じた場合、被害を受けたと想定される国がCAN事務局に対し、対抗措置の導入を提起できると定めている。コロンビア・ペソとペルー・ソルの対ドル減価により、エクアドルはドルを通貨として採用しているためコロンビアやペルーに比べ競争条件が著しく悪化し、エクアドル経済全般に悪影響を及ぼしているとし、エクアドル政府は2014年12月24日、CAN事務局に対抗措置の導入を提起した。しかし、CAN事務局からは早急な回答が得られなかったため、12月29日に2014年の貿易委員会決議第50号を採択し、コロンビア産品に対して21%、ペルー産品に対して7%の追加関税を2015年1月5日から適用した。

実際、コロンビアのペソとペルーのソルの価格は、2014年8月以降、米国の金融緩和の縮小懸念や新興国経済減速などの影響を受け、ドルに対して減価傾向にある。2015年2月時点のコロンビア・ペソの期中平均為替レートは1ドル=2,419.82ペソで前年7月比30.5%切り下がっており、ペルー・ソルも3.08ペソで10.5%切り下がっている(図1参照)。エクアドルは2000年以降、それまでの通貨スクレを廃止し、ドルを自国通貨としているため、他の新興国との間で輸出競争力に差が出ている。

図1ソル(ペルー)とペソ(コロンビア)の対ドル為替レートの推移

CAN事務局はエクアドルの対抗措置の導入を受け、正式に決定するまでは追加関税を適用しないよう求めた。コロンビア、ペルー両国もエクアドル政府と協議し、両国に対する追加関税の撤廃を働き掛けていた。CAN事務局の要請に反するかたちで追加関税を適用し続ける場合、コロンビア、ペルー両国政府の対抗措置の導入を招く恐れがあったため、エクアドル政府は今回、WTOの枠組みを用いて相手国を指定しないかたちの追加関税を導入したものとみられている。

<原油価格の低下が国際収支に影響>
エクアドルの国際収支悪化の背景には、原油価格の低下がある。エクアドルは産油国であり、2014年の輸出総額の51.7%を石油(大半が原油)が占めている。原油の国際価格の低下はエクアドルの貿易収支の悪化に直結している(図2参照)。

図2エクアドルの貿易収支

貿易収支の悪化を受け、エクアドル政府は2015年に入り、輸入を制限するような保護主義的な措置を相次いで導入している。貿易委員会は1月5日、2014年の決議49号に基づき、2012年に導入された環境保護を目的とした自動車の輸入総量規制(注1)の有効期限を2015年末まで延長するとともに、完成車の輸入上限枠を数量ベース(注2)で40.8%、CKD自動車部品の輸入上限枠を20.0%削減するなど規制内容を強化した。

貿易委員会はさらに1月12日、2014年12月29日付で採択した決議第51号に基づき、588品目(HSコード6桁ベース)に対し5〜15%の関税を課した。産業用機械や情報処理機器、印刷機、テレビカメラ、自動車部品など主に国内で生産されていないものが対象となっており、従来は関税が0%の品目だった。

(注1)エクアドル政府はGATT第20条(「一般的な例外」)の(b)に定められた「人、動物または植物の生命または健康の保護のために必要な措置」に基づく輸入数量制限措置だと主張している。
(注2)輸入上限枠は数量ベースと金額ベースの両方で定められており、どちらか一方でも枠を超えた場合は、輸入が許可されない。

(中畑貴雄)

(エクアドル)

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