商務省の2018年度予算は前年度比で16%減少-統計や貿易関連を重視-

(米国)

米州課

2017年06月28日

トランプ政権が5月23日に発表した、2018会計年度(2017年10月~2018年9月)の予算教書において、商務省の予算要求額(裁量的支出)は77億9,530万ドルで、前年度より14億4,429万ドル減少(16%減)している。商務省は予算を優先する分野として、中心的な所管分野である4つの項目、(1)2020年に実施する10年に1度の「国勢調査(The 2020 Decennial Census)」の準備、(2)正確な気象予報観測のためのインフラ整備や人員の配置、(3)海洋資源や海洋観測管理における政府の役割支援、(4)公平で安全な貿易を促進するための法執行、を挙げている。

商務省の主な予算削減は4項目

2018年度の商務省予算案は77億9,530万1,000ドルとなり、2017年度の暫定予算から14億4,428万8,000ドル減少した(表1参照、2018年度予算については2017年6月12日記事6月13日記事参照)。

表1 商務省全体の予算(裁量的支出)推移(単位:1,000ドル、△はマイナス値)
2016年度 2017年度
(暫定)
2018年度
(要求) 前年度比
9,281,577 9,239,589 7,795,301 △1,444,288

(出所)行政管理予算局(OMB)

トランプ政権の方針である国防・安全保障予算への重点投資により、商務省予算のうち、成果に乏しく他機関と重複した事業は削減された。主な削減項目として、経済開発局(EDA)、マイノリティー企業開発局(MBDA)の2つの部局廃止や、中小製造業への技術支援や業務支援などを行う「製造業拡大パートナーシップ(MEP:Manufacturing Extension Partnership)」プログラムに対する連邦政府資金と米国海洋大気庁(NOAA)による海洋管理などのプログラムへの助成金の廃止が挙げられている(表2参照)。

表2 商務省予算額(裁量的支出)のうち主な削減項目(単位:1,000ドル、△はマイナス値、―はなし)
主要な削減項目 2017年度
(暫定)
2018年度
(要求) 前年度比
経済開発局(EDA) 251 30 △221
マイノリティー企業開発局(MBDA) 32 6 △26
製造業拡大パートナーシップ(MEP) 130 6 △124
米国海洋大気庁(NOAA)の助成金と教育プログラム 262 △262
合計 675 42 △633

(出所)行政管理予算局(OMB)

廃止理由については、EDAやMBDAに関しては、事業が他機関と重複しているためだとしている。MEPに関しては当初、連邦政府資金はセンター立ち上げ用として6年未満とされていたものの、現在でも多くのMEPセンターがその資金を連邦政府から受け取っているのが実態となっているためとする。

予算を優先するのは商務省の中心的な所管分野

また、商務省は予算を優先する分野として、商務省の中心的な所管分野である4つの項目を挙げている。

(1)国勢調査:15億ドルを予算計上し、2020年実施の10年に1度の国勢調査の準備として、効率的に調査を行うためのITインフラなどへの資金とする。また、経済統計局(ESA)内でのミッションや政策の整理統合を行う。

(2)気象予報観測および(3)海洋観測:NOAAによる極軌道衛星や静止気象衛星の開発を継続する。また、国立気象局の予報能力維持のため、10億ドル超の予算計上を行う。

(4)貿易:2018年度予算により、国際貿易局(ITA)の法執行とコンプライアンス(アンチダンピングや相殺関税に関する調査など)を強化する。

そのほかでは、電気通信情報局(NTIA)に引き続き予算計上し、次世代ワイヤレスサービス開発支援などを行う。

(青島春枝)

(米国)

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