外国人就労許可の新制度が全国で導入-試験運用段階より基準はやや緩和-

(中国)

中国北アジア課

2017年05月02日

 北京市など10都市で試験運用されていた外国人の就労許可制度が、4月1日に全国に導入された。従来と同様、外国人をハイレベル人材(A類)、専門人材(B類)、一般人員(C類)に分類するが、分類基準は幾つか変更された。全体としてみると基準はやや緩和されている。

人材認定の基準に若干の修正

新しい外国人就労許可制度は2016年10月~2017年3月に、北京市や天津市など10地域で試験運用されてきた(2016年12月8日記事12月20日記事参照)。

全国導入に当たり、国家外国専門家局など4部門は4月6日、「外国人来華工作許可制度の全面実施に関する通知」を発表し、「外国人来華工作分類標準(試行)」に基づき、外国人就労許可手続きを行うとした。

新制度の最大のポイントは、外国人材をハイレベル人材(A類)、専門人材(B類)、一般人員(C類)に分類する点だ。それぞれの認定基準に基づきA~Cに分類されるが、「通知」によると、認定基準が試験運用段階の試行版から幾つか変更された(表1参照)。

表1 分類ごとの認定基準

まずA類では、認定基準の項目は試行版と変わらなかったものの、「優秀な青年人材」の基準年齢が35歳以下から40歳以下になったほか、「市場が推進する奨励類職位で必要とする外国人材」の中に、「所得が前年の中国の平均所得の6倍を下回らない外国人材」などが追加された。

B類では、試行版で記載されていた「中国国内の高等教育機関で修士以上の学位を得た優秀な卒業生」「中国国外のランキングトップ100以内の高等教育機関で修士以上の学位を得た卒業生」が削除され、代わりに「国際的な職業技能資格証書を持つ、あるいは不足している人材」「所得が前年の中国の平均所得の4倍を下回らない外国人材」「国家関連部門が規定した専門人員および実施プロジェクトに従事する人材」の3項目が追加された。

C類では、試行版で独立した項目だった「政府間協議に基づき実習、インターンを行う外国人青年」「遠洋漁業など特殊領域の業務を行う外国人」などがまとめられて1つの項目となり、新たに「現行の『外国人在中国工作管理規定』の基準に合致する外国人」「臨時もしくは短期(90日を超えない)で業務を行う外国人」の2項目が追加された。

経験を重視した点数評価制度に

表1の「点数評価制度」以外の基準を満たさない場合、最終的には点数評価制度により分類されるが、これについても試行版から若干の調整が行われた(表2参照)。

表2 点数評価の要素

主な変更としては、まず関連職歴期間の上限が15点から20点に引き上げられた一方で、中国語レベルに関する点数の上限は10点から5点に引き下げられている。また、新たに「知的財産を有しているか否か」「中国で5年以上連続勤務をしているか否か」の2項目が追加され、満たしている場合はそれぞれ5ポイント加算される。関連業務の従事経験が長ければ点数を加算できることになり、より勤務経験を重視した基準になったといえそうだ。

駐在員への影響は限定的か

一般的な企業の駐在員の場合、表1のB類認定基準(原則60歳以下)のうち「学士以上の学位と2年以上の関係する業務経験のある外国専門人材のうち、業種などの一定条件を満たすもの」に符合すれば、B類として認定される。仮に60歳超で上記の条件を満たさない場合でも、関連職歴期間や中国での連続勤務期間が長期にわたる場合はポイントが加算されるため、試行版では60点に達しなかった人材でも新制度ではB類として認められるケースが出てくるだろう。工場の生産管理などで経験豊富な50~60歳台の日本人を駐在させることが多い日系製造業などにとっては、基準が緩和されたといえそうだ。

また、仮に学士以上の学位を取得していない、もしくは業務経験が2年に満たない場合でも、18歳以上で、かつ従事する業務に必要とされる専門的技能を有すると判断された場合には、C類としての申請が可能となるなど、新基準による、外国企業から派遣される駐在員への影響は総じて限定的とみられる。

(小宮昇平、田中琳大郎)

(中国)

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