鉄鋼97品目の一般関税率15%を再々延長-180日間の暫定措置、対象品目は変わらず-

(メキシコ)

メキシコ発

2017年04月10日

 経済省は4月6日、暫定措置として鉄鋼97品目にかけていた一般関税率15%について、さらに180日間再々延長すると発表し、4月7日から適用した。97品目に変更はなく、電気、電子、自動車産業に対して特別に設定した産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)に基づく10品目(HS番号ベース)の無関税品目リストについても同様だ。

日本製は日墨EPAの活用で無関税に

鉄鋼97品目の一般関税率については2015年10月8日に0%から15%に引き上げられ、2016年4月5日に延長、10月8日に再延長の措置が取られていた。2017年4月6日付官報公示された政令第1条に基づき、4月7日からさらに180日間延長される。経済省はその理由として、2016年の鉄鋼需要は若干回復したものの一時的なものだというOECD報告があることや、不当な競争環境により国内の鉄鋼業界が打撃を受けていることを挙げている。

品目に変更はなく、全てHS72類の鋼材となっている。また、移行措置規定により、今回も期限を定めた暫定措置となっている。対象の97品目を含む鋼材268品目の関税は、2015年5月7日以前は3%だったが、それ以降は無税となっていた(注)。97品目以外の鋼材の一般関税は0%で変更はないものの、原産国によってはアンチダンピング(AD)税の対象になっている。

また政令第2条により、PROSEC対象業種のうち、電気、電子、自動車(部品も含む)産業に登録されている企業であれば、対象10品目についてはPROSEC税率を適用して0%となる。品目に変更はなく、電気産業(I)向けが3品目、電子産業(II)向けが1品目、自動車産業(XIX)向けが7品目(1品目は電気産業と重複)となっている(2015年10月14日記事添付資料参照)。

なお、政令第1条、第2条は一般関税率の引き上げを目的としているが、日本製の鋼材(HS72類)を輸入する場合には、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)に基づく特恵関税の適用を行えば、PROSECの取得状況いかんにかかわらず、無関税で輸入が可能だ。

メキシコ鉄鋼連盟(CANCACERO)のギジェルモ・ボーゲル会長は3月21日のCANACERO年次総会で、これら暫定措置について「維持すべきだ」と経済省に求めていた。また、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉により域内の鉄鋼製品の原産地規則を厳しくすることは、域内の製造業立地を増やす方向に向かうとも述べていた(2017年4月3日記事参照)。

(注)2010年2月9日付官報公示された輸出入一般関税率(TIGIE)ならびにPROSEC政令を改定する政令に基づき、鉄鋼および鉄鋼製品の大半の関税率は2012年1月1日に0%となった。しかし、2012年にアンパロ訴訟(憲法で保護された基本的人権を国が侵害した場合、その原因となった行政・立法・司法措置の無効を訴える裁判)が2件提訴され、関税引き下げの差し止め請求が裁判所に認められたことから、関税率は2012年8月1日に3%に引き上げられた(2012年8月10日記事参照)。突然の引き上げにより影響を受けた企業が多かったため、訴訟自体が不適法だという訴えが起こされ、裁判所が2015年5月7日に、これらアンパロ訴訟の適法性を否認したことにより、同日から鋼材268品目の一般関税率は0%に戻っていた。

(中島伸浩)

(メキシコ)

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