鉄鋼98品目の一般関税率を15%に引き上げ、6ヵ月の暫定措置-10品目は一部業種が無税のPROSEC対象に追加-

(メキシコ)

メキシコ事務所

2015年10月14日

 メキシコ経済省は10月7日、鉄鋼98品目に対する一般関税率を6ヵ月間、15%に引き上げると発表した。翌8日から適用されている。ただし、電気、電子、自動車業界に対しては、HS番号ベースで10品目を新たに産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)の対象品目に加えることで、当該業種の競争力低下を緩和するとした。今回の関税引き上げについて、世界的な経済環境の悪化や不当な競争環境により国内の鉄鋼業界が打撃を受けているため、と説明している。

<日本製鋼材は無税輸入が可能>

 2015107日付官報公示政令第1条により、98品目の一般関税率が0%から15%に引き上げられた(添付資料参照)。全てHS72類の鋼材だ。ただし、移行措置の第1条で公布翌日から180日間の暫定措置であることが示されている。鋼材268品目の関税は57日以前は3%だったが、それ以降は無税となっていた(注)。本政令の対象98品目以外の鋼材については、0%で変更はない。

 

 また、政令第2条により、PROSECの対象業種のうち、電気、電子、自動車(部品も含む)産業において登録されている企業であれば、対象10品目については、無税の対象となる(添付資料参照)。電気産業(I)向けが3品目、電子産業(II)向けが1品目、自動車産業(XIX)向けが7品目(1品目が電気産業と重複)となっている。

 

 同官報には示されていないが、本件は一般関税率の引き上げを目的としており、日本製の鋼材(HS72類)を輸入する場合には、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)に基づく特恵関税の適用を行えば、PROSECの取得状況にかかわらず、無税で輸入が可能だ。

 

<国内産業の保護が主眼>

 経済省が同政令の前文の中で説明する事情は次のとおりだ。世界の鉄鋼貿易は現在、需要の減少や生産能力の余剰により、成長の鈍化が際立つ。こうした環境下で、アンチダンピング調査の開始や、相殺関税の決定、セーフガード、鉄鋼など特定品目の関税引き上げなど、貿易救済措置の採用を余儀なくされる国がみられる。国内産業へのネガティブな影響を緩和するためだ。また鉄鋼市場では、自国企業に鉄鋼補助金を供与している国々が原因となって健全な競争が抑制されており、WTOに対する国内産業ダメージの訴えが増加している。

 

 メキシコの鉄鋼業界もこれら国際環境の例外ではなく、熱間・冷間圧延フラットロール製品や棒鋼などセンシティブ品目が影響を受けている。このため政府は、一時的(6ヵ月間)ながら鉄鋼98品目に対し、一般輸入関税の引き上げを必要とした。ただし、この税率引き上げに伴い、電気、電子、自動車の生産チェーンに影響が出ることから、同期間内のPROSEC対象品目を増やすことで対応する。

 

(注)201029日付官報で公示された輸出入一般関税率(TIGIE)ならびにPROSEC政令を改定する政令に基づき、鉄鋼および鉄鋼製品の大半の関税率は201211日に0%となった。しかし、2012年にアンパロ訴訟(憲法で保護された基本的人権を国が侵害した場合、その原因となった行政・立法・司法措置の無効を訴える裁判)が2件提訴され、当該人権侵害行為(関税の引き下げ)の差し止めが請求され、これが裁判所に認められたことから、0%だった関税率は201281日に3%に引き上げられた2012810日記事参照)。突然の関税率の引き上げにより影響を受けた企業が多かったため、同アンパロ訴訟自体が不適法だという訴えが裁判所に出された。裁判所は201557日、同アンパロ訴訟の適法性を否認したことにより、同日から鋼材268品目の一般関税率は0%に戻っていた。

 

(中島伸浩)

(メキシコ)

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