6割超が営業黒字見込む、事業展開には慎重姿勢も-2016年度ロシア進出日系企業実態調査(1)-

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2017年01月16日

 ジェトロがロシア進出日系企業を対象に実施した2016年度アンケート調査結果を、2回に分けて報告する。前編は業績見通しと今後1~2年の事業展開について。2016年の営業利益見込みについては62.7%が「黒字」と回答し、本調査を開始した2013年度以降で最も高かった。今後1~2年の事業展開については51.8%が「拡大」とした一方で、「現状維持」と回答した企業も47.0%あり、今後の展開に慎重な姿勢もうかがえる。

<景気の回復に伴い業績見通しが改善>

 ジェトロは「ロシア進出日系企業実態調査」を2013年度から毎年行っており、4回目となる2016年度調査を2016年10月7日~11月4日に実施した。調査対象はロシア進出日系企業(日本からの直接または間接出資比率が10%以上の現地法人、支店)で、今回は110社に回答を依頼し、83社(製造業19社、非製造業64社)から回答を得た。本調査結果はジェトロのウェブサイトで公開している。

 

 2016年の営業利益見込みを聞いたところ、これまでで最高の62.7%の企業が「黒字」と回答した(図1参照)。前回調査(2015年12月25日記事参照)では、2015年の営業利益見込みを「黒字」と回答したのは49.5%で過去最低だった。2015年のロシアの実質GDP成長率はマイナス3.7%と2009年以来のマイナス成長となったが、2016年1~9月の実質GDP成長率がマイナス0.7%(経済発展省推計値)と幾分回復していることが、2016年の「黒字」を見込む企業が多かった背景にあるようだ。

図1 当該年の営業利益見込み

 2015年の営業利益実績と比べた2016年の営業利益見込みについては、「改善」と「横ばい」がそれぞれ41.0%、「悪化」が18.1%だった(注)。「改善」とした企業にその理由を聞いたところ、多かったのは「現地市場での売り上げ増加」(61.8%)、「人件費の削減」(29.4%)で、前回調査と比べそれぞれ22.4ポイント、5.2ポイント上昇した(図2参照)。一方、「調達コストの削減」(27.3%→11.8%)、「その他支出(管理費、光熱費、燃料費など)の削減」(36.4%→17.6%)といった人件費以外のリストラ要素は前回より低下した。

図2 当該年の営業利益が改善する理由(複数回答可)

 なお、2016年と比べた2017年の営業利益見通しについては、「改善」が39.8%、「横ばい」が54.2%、「悪化」が6.0%で、前回調査と比べ「横ばい」が16.6ポイント増加した。「改善」と回答した企業のうち、90.9%の企業が「現地市場での売り上げ増加」を理由に挙げた。

 

<今後1~2年の事業拡大に慎重な企業も>

 今後1~2年の事業展開の方向性については、51.8%の企業が「拡大」と回答した(図3参照)。この比率は前回調査より7.2ポイント増加しており、事業展開に関する見方が幾分好転しているようだ。しかし、「現状維持」も47.0%を占め、慎重な姿勢も残っている。なお、事業を拡大する理由としては、「売り上げの増加」(81.4%)、「成長性、潜在力の高さ」(53.5%)を挙げる企業が多かった。

図3 今後1~2年の事業展開の方向性

 従業員数の増減傾向について聞いたところ、現地従業員数についてはほぼ半数の企業が過去1年で「横ばい」だった(図4参照)。今後については「横ばい」が半数超を占めるが、「増加」とした比率は過去1年を10.8ポイント上回っており、今後の事業展開の傾向と同様の兆しがみられる。

 

 一方、日本人駐在員数については「横ばい」が大半を占め、過去1年と今後を比較すると、その傾向がさらに強まっている。今後「増加」とする企業は2.4%にとどまっており、事業を拡大しても現地従業員の雇用に重きを置く企業が多いようだ。

図4 従業員数の増減

(注)数値は四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にならない。

 

(浅元薫哉)

(ロシア)

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