上海試験区、外債資金の人民元への自由両替で実施細則-外貨入金の審査制度や多国籍企業の認定基準の緩和も盛り込む-

(中国)

上海発

2016年01月04日

 国家外貨管理局上海分局は、中国(上海)自由貿易試験区で外貨管理制度の新しい改革措置を打ち出しており、同試験区内の企業に対し外債資金の人民元への自由両替を認可する実施細則を公布・発効した。また、経常項目の外貨入金に対する審査手続きが簡素化され、外貨資金を統一的に運用できる多国籍企業の認定基準も緩和された。

<外貨管理改革のオペレーション方法を定める>

 中国人民銀行(中央銀行)、商務部、銀行業監督管理委員会、証券監督管理委員会、保険監督管理委員会と上海市政府は20151029日、共同で中国(上海)自由貿易試験区での第2段階の金融緩和改革策となる「中国(上海)自由貿易試験区での金融開放・イノベーション政策をさらに推進し、上海の国際金融センターとしての発展を促進する方案(以下、金融方案)」を発表した。金融方案には、40項目の改革措置が盛り込まれている(2015年11月10記事照)

 

 国家外貨管理局上海分局は1217日、「中国(上海)自由貿易試験区で外貨管理テスト改革をさらに推進するための実施細則(以下、外貨細則)」を公布し、即日発効とした。外貨細則では、金融方案のうちの外貨管理制度関連の改革措置に関する具体的なオペレーション方法が決められている。

 

 外貨細則の主な改革措置は以下のとおり。

 

1)外債管理の緩和

 中国では、企業は外債資金(国外から借り入れた外貨資金)について、実需に応じて人民元への両替を申請できるが、人民元への自由両替は認められていない。今後、試験区内の企業は外債資金を自由に人民元に両替でき、為替レート変動リスクを避けられるようになる。ただし、人民元に両替された資金の使用は企業経営活動の範囲内に限定される。

 

 また、試験区内のファイナンスリース企業はリース対象物件の購入資金の50%以上が国内からの外貨借金または外債資金であれば、国内業務で外貨形式でリース料を取ることが認められている。

 

2)経常項目の外貨入金に対する審査手続きの簡素化

 中国では、輸出企業は外貨の貨物代金を直接に自社の外貨経常口座に振り替えできず、いったん審査待ち口座に入金し、外貨管理局の審査を受けなければならないが、今後は貿易外貨管理の信用度がAランクに達した試験区内企業は、審査待ち口座が不要となる。

 

3)多国籍企業の外貨資金の管理緩和

 国家外貨管理局上海分局は20142月、同試験区内で多国籍企業に対し、外貨資金の統一的な運用を認めたが(2014年3月11日記事参照、今回は同資金運用業務を展開できる多国籍企業の認定基準を緩和した。認定基準となる前年度の収支規模の下限を1億ドルから5,000万ドルに引き下げている。

 

(文涛)

(中国)

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