上海自由貿易試験区、人民元と外貨の両替を初めて自由化-民間と国外資本の金融業参入制限を緩和-

(中国)

上海事務所

2015年11月10日

 中国政府は中国(上海)自由貿易試験区において、第1段階の金融緩和改革策のテスト運営を2年近く行ってきたが、このほど第2段階の改革策を発表した。同試験区では、国内で初めて資本項目の人民元と外貨との両替を自由にし、民間資本と国外資本の国内金融業への参入に対する制限をさらに緩和する。

<第2段階は40項目の改革措置>

 中国人民銀行(中央銀行)は201312月、上海自由貿易試験区での金融緩和改革策を発表し(2013年12月5記事参照)、金利の自由化、外貨管理の緩和や国境を越えた人民元の使用など、一連の改革措置を2年近くテスト運営してきた。

 

 中国人民銀行、商務部、銀行業監督管理委員会、証券監督管理委員会、保険監督管理員会と上海市政府は1029日、共同で第2段階の金融緩和改革策となる「中国(上海)自由貿易試験区での金融開放・イベーションテスト政策をさらに推進し、上海の国際金融センターとしての発展を促進する方案(以下、金融改革方案)」を発表した。金融改革方案には、「資本項目の人民元自由両替」「国境を越えた人民元使用の拡大」「金融業の参入制限緩和」「国際的な金融市場の構築の促進」「金融監督の強化とリスクの防止」の5つを軸とした40項目の改革措置が盛り込まれている。

 

<具体的な実施方法は細則制定後>

 改革措置のうち、特に「資本項目の人民元自由両替」の改革措置が注目されている。これまで、貿易収支や役務収支、利子や配当の支払いなどの経常項目においてしか人民元と外貨との自由両替が認められなかったが、今回の改革措置により、上海自由貿易試験区においては資本の輸出入取引に伴う人民元と外貨との自由両替が可能になり、国内外機関・個人の国内外市場における投資はさらに自由化される。

 

 金融改革方案40項目の改革措置の第1項目に、「『自由貿易口座』(注)内の人民元と外貨を、慎重なマクロコントロールの下で両替可能にする原則の下、管理する」と示されている。金融監管政策研究会の孫海波研究員は具体的な実施方法について、金融管理当局が人民元と外貨との両替に対し上限額を設け、上限以下の金額なら自由両替が可能になるのではないか、と予測している。政府がどんな実施方法を採用するかは、関連「細則」の制定が終わり次第、明らかになる。

 

<銀行やファイナンス会社などの金融機関設立を支持>

 金融改革方案には、民間資本と外国資本の金融業参入の制限をさらに緩和する条文も書き込まれている。第10項目では、民間資本が銀行、ファイナンスリース、ファイナンス会社、自動車金融会社、消費者金融会社などの金融機関を設立することを支持すると明記されている。

 

 また、第18項目では外資金融機関が試験区内で証券会社と証券投資顧問会社を合弁で設立すること、第21項目では外資が健康保険機関を設立することが認められている。第30項目では試験区内で国際的金融資産取引プラットホームを構築することを支持し、長期投資意向のある国外資本を国内の株式、債券、ファンドなどの市場へ徐々に導入し、国外投資機関が国内の新規公開株の仮条件決定と需要申告に参与することを認めると明記している。第31項目では、国外投資機関が試験区内で国内先物取引に参与する国外投資家向けに関連サービスを提供する単独資本または合弁の先物投資サービス機関を設立することが承認されている。

 

(注)同試験区における第1段階の金融緩和改革策によって、「自由貿易口座」という制度が導入されている。自由貿易口座は一種のオフショア口座で、試験区内企業が開設した自由貿易口座と国外口座や他の企業の自由貿易口座との間で資金を自由に振り替えることや、試験区内企業が開設した自由貿易口座と区外の一般口座との間で投資などの実需に応じて資金を振り替えることができ、資金移動の自由化を促進する制度だ。

 

(文涛)

(中国)

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