上海自由貿易試験区で外貨管理を大幅緩和−外貨資金の統一的な運用が可能に−

(中国)

上海事務所

2014年03月11日

中国人民銀行(中央銀行)は2月28日から、中国(上海)自由貿易試験区内で外貨管理制度の緩和策を実施した。これにより多国籍企業は、同試験区内に開設した口座を通して外貨資金を統一的に運用できるようになった。

<外貨業務の手続きを簡素化>
中国人民銀行上海本部と国家外貨管理局上海分局は2月28日、「上海自由貿易試験区の建設をサポートするための外貨管理実施細則」(以下、「外貨管理細則」)を共同発表し、同試験区内で外貨管理を大幅に緩和した。

中国人民銀行は2013年12月2日、「金融による上海自由貿易試験区建設のサポートに関する意見」(以下、「金融意見」)を公布し、同試験区で金融管理制度を大幅に緩和する方針を30項目にわたって発表している(2013年12月5日記事参照)。「外貨管理細則」は、外貨管理の規制緩和を決定した「金融意見」の第21〜25項目の詳細を規定している。中国人民銀行上海本部は「外貨管理細則」の原文を公開していないが、公式サイトで同日発表した報道資料と2月28日発表の質疑応答で、「外貨管理細則」の概要を説明している。主な内容は以下のとおり。

(1)経常項目の外貨業務の利便性向上
区内企業と海外企業・機関との間の経常項目の外貨業務の手続きを簡素化し、外貨の集中受け払い業務(注1)、外貨の差金決済(注2)およびファイナンスリース会社が外貨リース料を受け取ることを認める。

(2)直接投資の外貨登記簡素化
直接投資の外貨登記手続きを簡素化する。区内の外商直接投資企業に外貨資本金の自由な人民元への交換を認め、為替リスクの管理を可能にする。海外企業・機関との間の外貨資金融通の利便性を高めるために、対外債権・債務の審査手続きの一部を撤廃する。

(3)試験区における企業および新型貿易への支援
多国籍企業本社の外貨資金集中運営管理制度、外貨プーリング管理制度およびテスト運営中の国際貿易決済センターの外貨管理制度の対象企業の範囲を拡大し、審査と口座管理の手続きをさらに簡素化する。

(4)外貨金融業務の発展促進
人民元と外貨の交換体制を整備し、銀行が区内企業に対してコモディティー商品の店頭デリバティブ取引を提供することを支援する。

今回の発表によると、「外貨管理細則」実施後、多国籍企業は以下のような外貨資金の統一的運用が可能となる。

(1)グループ内の区内企業に国内資金の主口座を開設させ、同口座で経常項目の外貨集中受け払い業務、外貨差金決済、グループ内の国内企業の外貨資金集中運営管理を行うことができる。

(2)グループ内の区内企業に国際資金の主口座を開設させ、同口座で海外企業・機構との外貨資金のやり取りを行うことができる。

(3)国内資金の主口座と国際資金の主口座の間で自由な資金移転を行える。ただ、国家外貨管理局は同資金移転に対し上限額を設定することになる。

<金融リスクの管理制度を整備>
また、中国人民銀行上海本部は2月28日、最近実施した一連の金融緩和策に合わせてリスク管理制度を完備するため、「上海自由貿易試験区でのマネーロンダリングおよびテロ資金供与の防止策の徹底に関する通達」を発表した。同通達は「金融意見」の第26〜30項目の詳細を規定している。

(注1)集中受け払いとは、同じビジネス相手との複数回のビジネスで一括で受け払いすること。
(注2)同じビジネス相手に対し売りと買い行為を行った場合、売りと買いの差額の授受で一括決済すること。

(文涛)

(中国)

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