韓中FTAなどの批准案、国会で可決
(韓国)
ソウル事務所
2015年12月04日
韓国と中国の自由貿易協定(FTA)批准案が11月30日、韓国国会本会議で可決された。韓国政府は、関税引き下げなどの効果をいち早く享受するため、韓中FTAを2015年内には発効するよう取り組む方針だ。併せて、影響が予想される農漁業分野対策も発表した。また本会議では、その他の2国間の3つのFTA(ニュージーランド、ベトナム、トルコ)に関する批准案も可決された。
<政府は年内の発効を目指す>
韓国国会は11月30日に本会議を開き、265人の国会議員が出席して中国とのFTA批准案の採決を行い、賛成196、反対33、棄権36で可決した。これにより、2014年11月10日に実質的妥結が宣言され、2015年6月1日に正式署名された韓中FTAは年内の発効が可能になる見通し。政府は、今後の行政手続きを最大限に短縮しつつ、中国政府と緊密な協議を進めることで、年内に発効させる方針だ。
政府が韓中FTAの発効へ迅速に取り組む理由は、大きく分けて2つある。第1に、発効後即時に関税の引き下げが行われ、その翌年の1月1日にも追加的な関税の引き下げが行われる点が挙げられる(表参照)。政府は、中長期的に関税が引き下げられる品目が多い同FTAの効果を極大化するためには、年内に発効させ、2016年1月1日から関税引き下げの第2次年度に入ることが重要だ、と説明している。
第2には、サービス・投資分野に関する交渉を迅速に行うことが目的だ。韓中FTAは、サービス・投資分野については、開放分野を列挙するポジティブリストを採用しているが、未開放分野を列挙するネガティブリストに切り替えて市場開放の水準を高めることを目的とした交渉を、発効後2年以内に行うことになっている(2014年11月12日記事参照)。政府はそれを通じて、今後の高い成長が見込まれる中国のサービス市場を早期に追加開放させる意向を示している。
<農漁業分野の対策には批判も>
批准とともに、韓中FTAの発効による影響が予想される農漁業分野のための対策も発表された。韓国政府は、今後10年間に総額1兆6,000億ウォン(約1,760億円、1ウォン=約0.11円)規模の予算を投入し、金利引き下げや税制支援などを行うと明らかにした。加えて、民間企業や公営企業などの自発的な寄付金を財源に毎年1,000億ウォンずつ10年間で総額1兆ウォン規模の基金を創設し、農漁業分野を支援する計画も発表した。しかし主要紙の多くは、この基金計画を1面に取り上げた上で批判した。例えば、「朝鮮日報」(12月1日)は「自発的に払いなさいという『1兆ウォン基金』」という見出しを付けた記事を掲載し、「政府からの寄付金納付要請に対し、企業は払わざるを得ない」とする財界関係者のコメントを伝えた。
<その他3つのFTA批准案も可決>
国会本会議では、ニュージーランドとのFTA(2014年11月20日記事参照)とベトナムとのFTA(2014年12月16日記事、2015年5月12日記事参照)の批准案も可決された。さらに、2013年5月に商品貿易の協定に限って発効したトルコとのFTAについては、サービス協定と投資協定(2014年7月15日記事参照)の批准案が可決された。
〔柳忠鉉(ユ・チュンヒョン)〕
(韓国)
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