ベトナム・韓国FTAに正式署名-2020年までに両国の貿易額700億ドルに-

(ベトナム、韓国)

ハノイ事務所

2015年05月12日

 ベトナム政府は5月5日、ハノイにおいて、韓国との間で実質妥結していたベトナム・韓国自由貿易協定(VKFTA)に正式署名したと発表した。関税の引き下げに関しては、輸入額ベース(2012年ベース)で韓国側が97.2%、ベトナム側が92.7%撤廃される予定だ。VKFTAが実施されることで2020年までに両国の貿易額が700億ドルに達すると見込まれている。

<韓国とのFTAはAKFTAに続き2協定目>
 VKFTAは2012年8月に交渉を開始。8回の正式交渉と8回の中間会合を行い、2014年12月に両国間で実質交渉妥結となった。VKFTAの正式調印はグエン・タン・ズン首相が立ち会って、両国政府を代表してベトナム側はブー・フイ・ホアン商工相、韓国側は尹相直(ユン・サンジク)産業通商資源部長官が署名した。

 VKFTAの協定書は17章、208条、15付属書、規定実施合意書から構成される。具体的には、物品貿易、サービス貿易、貿易救済措置、投資、知的財産、衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS)の対策、原産地規則、貿易の技術的障害のルール(TBT)、電子取引技術、競争、経済協力などだ。このほか、VKFTAではベトナムの労働者雇用創出と所得向上、農村の貧困削減などにも取り組むことになっている。

 VKFTAが発効されると、ベトナムにおいて9番目のFTA/経済連携協定(EPA)となり、2国間では3ヵ国目。また韓国とは、2007年にASEAN韓国自由貿易協定(AKFTA)が発効しており、2協定目となる。

<韓国、ベトナムの電子産業などの競争力向上を支援>
 商工省によると、関税の引き下げに関して、韓国側は輸入額ベース(2012年ベース)で97.2%、品目ベースで95.4%が自由化される。具体的に、農水産品はエビ・カニ・魚類・熱帯果物、工業製品は縫製品・木工製品・機械製品などとなる。また、韓国側はセンシティブ品目となっていたニンニク、ショウガ、蜂蜜、サツマイモなども開放することとなる。商工省はこれら品目を韓国に多く輸出している中国、インドネシア、マレーシア、タイなどと競争ができると意気込む。

 ベトナム側は輸入額ベース(2012年ベース)で92.7%、品目ベースで89.2%が自由化される。具体的には、織物原料、プラスチック原料、電子部品、乗用車(3000cc以上)、自動車部品、家電製品、一部鉄鋼製品など。同省は上記品目の大半が現地で調達できないため、当地での生産を補完できると説明している。

 2014年のベトナムと韓国の貿易額は288億8,000万ドル(前年比5.7%増)。ベトナムからの輸出が71億4,400万ドル(7.7%増)、輸入が217億3,600万ドル(5.0%増)と145億9,200万ドル(3.7%増)の貿易赤字となっている。

 ホアン商工相は対韓国貿易赤字に関して、VKFTAが発効されたとしても数年続くものとみている。その一方で、同商工相は韓国側が上記品目を開放したことにより、これまで以上に輸出額が増加し、輸入額は輸出額ほど増加しないのでは、との見解を示した。

 また、VKFTAの交渉を通して、韓国側は自国が得意とし、ベトナム側が必要としている分野である農林水産業、電子産業、石油精製、裾野産業に対する競争力向上を目的とした支援に同意している。

 このため、同商工相は「VKFTAが実施され、経済、貿易、投資の分野で協力関係が着実に飛躍していけば、両国の貿易額は2020年までに700億ドルに達する」と述べ、今後の韓国との経済関係発展に期待を示した。

 VKFTAの発効日は正式には決定していない。政府ウェブサイトによると、発効は両国の内部手続き終了後、外交文書を通じて通知した日から2ヵ月目の初日、もしくは両国が同意した日、と伝えている。

(佐藤進)

(ベトナム、韓国)

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