日本の伝統産品や映像コンテンツが好評-サンパウロで第18回日本祭り開催-

(ブラジル)

サンパウロ事務所

2015年07月31日

 第18回日本祭り(フェスティバル・ド・ジャポン)が7月24日から26日にかけて、サンパウロ市内のイミグランテス・エキシビジョン&コンベンションセンターで開催された。2015年は日ブラジル外交関係樹立120周年に当たり、日本政府がパビリオンを設けた。ジェトロブースでは日本の映像コンテンツや伝統産品などの紹介を行い盛況だった。日系企業もビジネスチャンスの場として祭りを活用している。

<日本政府がパビリオンを開設>

 サンパウロの日本祭りには毎年延べ約18万人が訪れ、世界最大といわれる日本祭りだ。在ブラジル日系企業や各都道府県人会が中心となってブースを出展するほか、日本文化芸能を紹介する催し物なども行われ盛況を博している。

 

 日ブラジル外交樹立120周年を迎えた2015年のテーマは「友情、異文化交流、両国の繁栄」。日本政府も120周年パビリオンを設け、外務省、農林水産省、国際交流基金、国際協力機構(JICA)、日本政府観光局(JNTO)、ジェトロがブースを出展し、60を超える日系企業が協賛した。外務省は日ブラジル間のこれまでの経済的、文化的な歩みを紹介するパネルを展示し、農林水産省は日本食材や日本食の普及をテーマにデモンストレーションを行った。

 

 ジェトロのブースでは、日本コンテンツの紹介や、20152月に開催された「ブラジル国際ギフトフェア」(2015年3月27日記事参照の出展品の一部を展示したところ、非日系・日系ブラジル人を含む多くの来場者が興味を示した。

 

<日本製品の需要増に期待>

 ジェトロブースでは「ドラえもん」を紹介した。ブラジルにおける日本コンテンツの代理店として長年の経験があるサトウ・カンパニーが、ブラジルにおける「ドラえもん」の配給権を取得し、201412月からネットフリックス(Netflix)で配信している(調査レポート「中南米における映像コンテンツ産業の現状」および2014919日記事参照)。

 

 同社のネウソン・サトウ氏は「ドラえもんは、例えばスペインで20年以上にわたって放送されるなど世界中で人気。これまでブラジルで放送され人気を博した「セーラームーン」「聖闘士星矢」「ポケモン」などと異なり、日本の伝統文化の要素が盛り込まれたアニメであり、日系人であれば懐かしさを感じ、非日系ブラジル人もドラえもんを通じて日本を知ることができる。丸みを帯びたドラえもんはブラジルの子供の心をつかむだろう」と期待を寄せる。

 

 ブラジル経済の低迷にもかかわらず、電気通信庁(ANATEL)によると、有料テレビ放送の加入世帯数は増加を続けており、20155月現在、国内の29.8%に当たる1,972万世帯が加入しているという。

 

 サトウ氏は今後、映画放送や関連商品の販売も検討しており、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用してドラえもんの知名度を高めているという。

 

 そのほか、ジェトロブースで展示したのは、伝統的な漆器、数珠、風呂敷、包丁など。いずれも日本の伝統の中にモダンなテイストをちりばめたもので、日本国内で販売される雑誌に、スタイリッシュなデザインの伝統製品として取り上げられたものも含まれる。

 

 会期中は来場者が輸入代理店サンディアを通じて製品を注文・購入することも可能で、多くの引き合いがあった。同社のダンテ・ミヤガワ氏は「展示品はいずれもサンパウロ市内の東洋人街などで目にする製品とは異なる。良質でデザイン性も高いため価格は決して安くないが、それでも注文を請け負ったのは、日本の伝統産品の良さを生かしながら、実用性が高くデザインが工夫されておりブラジルでは手に入らない製品だから」と話し、これらの製品のブラジルでの需要の高まりに期待している。

 

<エイチ・アイ・エスも初出展>

 在ブラジル日系企業の出展も目立った。これまで複数回出展しているトヨタやホンダなどは規模の大きなブースで多くの来場者の目を引いた。2011年に当地業界2位の清涼飲料メーカーであるスキンカリオールを買収したキリンホールディングスは、2014年から国内で製造、販売を始めた「キリン一番搾り」を振る舞い、世界3位のビール消費量を誇るブラジル市場での知名度向上に努めた。

 

 2011年にブラジルに進出したエイチ・アイ・エスは今回が初めての出展。佐々木伸仁社長は「ブラジルに進出して丸4年。日本祭りには初めての出展だが来場者の反応は上々だった」と期待を寄せる。もともと、日本から物理的に遠い南米で日本人の顧客のみを対象にビジネスを扱うには限度があり、ローカルマーケットを商圏の中心に置くことをベースに事業を進めてきた。今回の出展は、10万人以上の来場者が見込まれる本イベントでブラジルにおける知名度向上とローカルマーケット進出の足掛かりをつかむためという。会期中は、非日系ブラジル人を含む多くの来場者から想像以上の反応があったようだ。

 

 在ブラジル日系人向けに始まった日本祭りは、サンパウロを代表するイベントに成長しており、企業もビジネス拡大の場として祭りを活用している

 

(辻本希世)

(ブラジル)

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