2017年の貿易赤字は4年連続で前年比増(米国)
対日赤字は2年連続で縮小

2018年5月16日

2017年の貿易は、輸出が前年比5.6%増の2兆3,316億ドル、輸入が6.9%増の2兆9,000億ドルとなり、貿易赤字は前年より636億ドル多い5,684億ドルと4年連続の増加となった。輸出入額の増加は原油価格の上昇と取引量の増加などが影響した。国・地域別の貿易赤字額では、対中赤字が2年ぶりに増加した一方、対日赤字は2年連続で縮小した。

貿易赤字は4年連続で拡大

商務省が3月21日に発表した2017年の貿易統計(国際収支ベース)によると、輸出(財・サービス)は前年比5.6%増の2兆3,316億ドル、輸入は6.9%増の2兆9,000億ドルとなった(表1、図参照)。その結果、貿易赤字は前年より636億ドル多い5,684億ドルとなり、4年連続で増加した。

表1:財・サービス貿易収支推移(国際収支ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2016年 金額 前年比
(貿易収支は差額)
2017年 金額 前年比
(貿易収支は差額)
輸出 2,208,072 △ 2.5 2,331,599 5.6
階層レベル2の項目 1,455,704 △ 3.6 1,550,720 6.5
階層レベル2の項目 サービス 752,368 △ 0.1 780,879 3.8
輸入 2,712,866 △ 1.9 2,900,041 6.9
階層レベル2の項目 2,208,211 △ 2.8 2,361,932 7.0
階層レベル2の項目 サービス 504,654 2.6 538,108 6.6
貿易収支 △ 504,793 △ 4,348 △ 568,442 △ 63,649
階層レベル2の項目 △ 752,507 9,348 △ 811,212 △ 58,705
階層レベル2の項目 サービス 247,714 △ 13,696 242,770 △ 4,944
出所:
商務省データを基に作成
図:財・サービス貿易収支推移(国際収支ベース)
輸出、輸入、貿易赤字の順に、1980年は、2,718億ドル、2,912億ドル、194億ドル、1981年は、2,944億ドル、3,106億ドル、162億ドル、1982年は、2,752億ドル、2,994億ドル、242億ドル、1983年は、2,661億ドル、3,239億ドル、578億ドル、1984年は、2,911億ドル、4,002億ドル、1,091億ドル、1985年は、2,891億ドル、4,110億ドル、1,219億ドル、1986年は、3,100億ドル、4,486億ドル、1,385億ドル、1987年は、3,489億ドル、5,006億ドル、1,517億ドル、1988年は、4,312億ドル、5,457億ドル、1,146億ドル、1989年は、4,870億ドル、5,801億ドル、931億ドル、1990年は、5,352億ドル、6,161億ドル、809億ドル、1991年は、5,783億ドル、6,095億ドル、311億ドル、1992年は、6,169億ドル、6,561億ドル、392億ドル、1993年は、6,429億ドル、7,132億ドル、703億ドル、1994年は、7,033億ドル、8,017億ドル、985億ドル、1995年は、7,944億ドル、8,908億ドル、964億ドル、1996年は、8,516億ドル、9,557億ドル、1,041億ドル、1997年は、9,345億ドル、1兆427億ドル、1,083億ドル、1998年は、9,332億ドル、1兆993億ドル、1,661億ドル、1999年は、9,699億ドル、1兆2,285億ドル、2,586億ドル、2000年は、1兆753億ドル、1兆4,478億ドル、3,725億ドル、2001年は、1兆57億ドル、1兆3,672億ドル、3,615億ドル、2002年は、9,787億ドル、1兆3,977億ドル、4,190億ドル、2003年は、1兆204億ドル、1兆5,143億ドル、4,939億ドル、2004年は、1兆1,615億ドル、1兆7,714億ドル、6,099億ドル、2005年は、1兆2,860億ドル、2兆3億ドル、7,142億ドル、2006年は、1兆4,576億ドル、2兆2,194億ドル、7,617億ドル、2007年は、1兆6,535億ドル、2兆3,589億ドル、7,054億ドル、2008年は、1兆8,416億ドル、2兆5,503億ドル、7,087億ドル、2009年は、1兆5,831億ドル、1兆9,668億ドル、3,838億ドル、2010年は、1兆8,536億ドル、2兆3,483億ドル、4,947億ドル、2011年は、2兆1,270億ドル、2兆6,756億ドル、5,486億ドル、2012年は、2兆2,190億ドル、2兆7,558億ドル、5,368億ドル、2013年は、2兆2,935億ドル、2兆7,553億ドル、4,619億ドル、2014年は、2兆3,759億ドル、2兆8,662億ドル、4,903億ドル、2015年は、2兆2,639億ドル、2兆7,644億ドル、5,004億ドル、2016年は、2兆2,081億ドル、2兆7,129億ドル、5,048億ドル、2017年は、2兆3,316億ドル、2兆9,000億ドル、5,684億ドルとなった。
出所:
商務省データを基に作成

財貿易は主要財全てでプラス

財貿易をみると、輸出が前年比6.5%増の1兆5,507億ドル、輸入が7.0%増の2兆3,619億ドルとなった。輸入の増加額が輸出のそれを上回ったことから、赤字額は前年比587億ドル増加し、8,112億ドルとなった。輸出入ともに、全ての主要財がプラスとなった(表2参照)。

輸出を財別にみると、エネルギー関連製品(41.5%増)、化学品(7.6%増)、金属・非金属製品(8.6%増)、民間航空機用エンジン・部品(7.5%増)、半導体(8.2%増)の順で押し上げに寄与した。エネルギー関連製品の中では、原油の輸出が最も大きく伸びた。米国産原油価格の上昇と輸出数量の増加により、輸出額は前年より124億ドル増加し、過去最高の217億ドル(前年の2.3倍)となった。米国産の原油単価(WTIスポット)は、石油輸出国機構(OPEC)での生産量調整などの影響により、前年より7ドル高い1バレルあたり51ドル(2017年平均)に上昇した(エネルギー情報局)。また、輸出数量は、米国産価格の上昇幅がブレント原油価格を下回ったため、相対的に価格競争力が高まったことなどが押し上げに寄与した。

輸入を財別にみると、原油(30.2%増)などのエネルギー関連製品(22.7%増)、金属・非金属製品(20.0%増)、携帯電話を含む家庭用品(8.7%増)、コンピューター(13.4%増)、乗用車(カナダ以外)(6.2%増)の順で押し上げに寄与した。原油の輸入額は、価格上昇に加えて、カナダ、イラクからの輸入量が伸びたことなどから、前年より314億ドル増加し、1,354億ドルとなった。

表2:2017年の主要財別貿易(国際収支ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値、-は該当なし)
区分 主要財 金額 前年比 寄与度が最大の個別財
輸出 合計 1,550,720 6.5 -
食料品・飲料 132,917 1.8 肉類
工業用原材料 453,735 17.3 エネルギー関連製品
(うち原油) 21,724 133.5 -
資本財 533,098 2.6 民間航空機用エンジン・部品
自動車・同部品など 157,554 4.8 トラック、バスなど(カナダ向け)
消費財 197,271 2.0 携帯電話を含む家庭用品
その他 76,146 1.8 -
輸入 合計 2,361,932 7.0 -
食料品・飲料 138,831 5.9 魚貝類
工業用原材料 512,036 15.9 石油および石油製品
(うち原油) 135,380 30.2 -
資本財 643,695 8.4 コンピューター
自動車・同部品など 359,908 2.5 乗用車(カナダ以外)
消費財 604,245 3.2 携帯電話を含む家庭用品
その他 103,218 △ 1.7 -
出所:
商務省データを基に作成

対日貿易赤字は2年連続で縮小

財貿易を主要国・地域別にみると、輸出ではカナダ(前年比5.9%増)、中国(12.8%増)、アジアNIES(11.2%増)、輸入では中国(9.3%増)、カナダ(8.0%増)、メキシコ(6.4%増)の順で押し上げた(表3参照)。

主要国・地域別の貿易収支額をみると、対中国貿易の赤字額が3,757億ドルと最大で、2年ぶりの増加(前年比で284億ドル増)となった。携帯電話を含む電気機器、パソコン用部品などを含む機械製品の輸入が伸びたことなどが影響した。赤字額は、2000年以降主要国・地域の中で最も大きい状態が続いており、2017年は全体の46.3%を占めた。

対日貿易の赤字額は前年より5億ドル縮小し、697億ドルとなった。石油ガスなどの鉱物の輸出増により、赤字額は2年連続で縮小した。

また、北米自由貿易協定(NAFTA)圏に対する貿易赤字は3年ぶりに増加し、前年比126億ドル増加の994億ドルとなった。カナダの赤字額は前年比で69億ドル増加し、メキシコは57億ドル増加となった。カナダの増加は原油の輸入増、メキシコは自動車の輸入増などが影響した。

表3:2017年国・地域別の財貿易(国際収支ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出 前年比 輸入 前年比 貿易収支 前年との差
世界計 1,550,720 6.5 2,361,932 7.0 △ 811,212 △ 58,705
中国 130,797 12.8 506,469 9.3 △ 375,672 △ 28,382
日本 68,714 7.4 138,431 3.2 △ 69,718 515
インド 25,142 16.3 48,736 5.7 △ 23,594 907
アジアNIES 145,665 11.2 141,497 4.7 4,168 8,322
北米 526,426 5.9 625,830 7.2 △ 99,403 △ 12,600
階層レベル2の項目 カナダ 282,974 5.9 306,131 8.0 △ 23,157 △ 6,881
階層レベル2の項目 メキシコ 243,452 5.9 319,699 6.4 △ 76,246 △ 5,719
ブラジル 36,891 22.9 27,752 12.7 9,139 3,737
欧州主要国 162,037 5.9 271,295 3.5 △ 109,257 △ 195
サウジアラビア 16,268 △ 10.0 18,938 11.5 △ 2,671 △ 3,769
その他 438,780 3.3 582,984 7.6 △ 144,204 △ 27,240
出所:
商務省データを基に作成
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 リサーチャー
大原 典子(おおはら のりこ)
民間企業勤務を経て2013年よりジェトロ・ニューヨーク勤務。自動車産業を柱に米国の産業調査を担当。