海外における日本産食材サポーター店認定制度

日本産食材サポーター店インタビュー TOKYO-YA
(マドリード店)

丁寧な活動で市場拡大を続けるスペイン大手の小売店

所在地:マドリード(スペイン)

来客のメインが日本人からスペイン人へ

1981年にスペイン・マドリードで創業したTOKYO-YAは、2017年現在、小売店2店舗(マドリード、バルセロナ)、4都市に卸売事務所・物流拠点(マドリード、バルセロナ、バレンシア、ポルトガル〈リスボン〉)、マドリードに日本酒バー「Shuwa酒和」を構えており、国内大手の日本産食材輸入・卸売・小売店である。

今回は代表取締役、佐藤博伸(さとうひろのぶ)社長にマドリードにある小売店について話を伺った。入社した1983年(開店から2年後)当時、顧客の99%は日本人だったというが、東洋の食文化が浸透し始めた1995年頃からスペイン人の来店が増加し、現在の顧客は9割がスペイン人である。2017年現在、取り扱っている日本産食材は業務用を合わせると1,500〜2,000品目、日本酒は約150種に及ぶ。

インポーターとして日本食を広める役目も担う

品目の多さはもちろんだが、さらに目を引くのは、店内のあちこちに配置された食材を説明するPOPや日本食のレシピである。「日本人が携る、日本産食材を販売する店として、単に商品を販売するだけではなく、日本食を広めるための工夫をしています」と佐藤社長が店の特徴を語るように、来店するスペイン人に向けた気遣いが随所に見られ、従業員も食材についての説明を欠かさない。

店内にはレジ横に試食コーナーがあるほか、それぞれの棚にも試食用の皿が用意されている。さらに入り口では鉄板を用意してお客様の前でどら焼きを作るなど、様々な方法で商品のアピールをしている。また、日本食を広く知ってもらう機会として、展示会への出展や、スーパーマーケットで巻き寿司のデモンストレーション、日本酒の試飲会も行なっており、その活動は店舗内にとどまらない。

スペイン人従業員の視点から

販売員として働く入社3年目のスペイン人従業員ノエリアさんも日本食周知を図る一人だ。売れ筋商品は米、海苔、醤油など寿司の材料で、即席味噌汁、ラーメン、枝豆が続く。これらの商品は需要の増加に伴い、スペインに多いセリアック病患者向けのグルテンフリー製品や、より製造にこだわった製品なども取り扱っており、品揃えの幅が広がっているという。またマドリード店では、以前、著名な医師がダイエット食品としてしらたきをパスタのように調理するレシピを発表したことで、健康商品としての人気が高いのだとか。今後の売れ行きが期待されるのは焼きそばの材料。「焼きそばを作りたいというお客様には、麺やソースはもちろんですが、青のりや鰹節もおすすめしています」と語った。

地酒ファン増加と一般への日本酒の浸透

TOKYO-YAでは、数年前まではナショナルブランドが取扱商品のメインだったが、近年の日本食ブームと訪日旅行者の増加によりファンが増え、地酒の売り上げが伸びている。スペイン人はワインで舌が肥えているため、日本酒の味わいにも敏感だという。また、日本酒に興味を示すワインソムリエも多く、唎酒師の資格を持つ従業員による講習会を実施している。その一方、無色透明な日本酒はアルコール度数の高いジンなどと同種だと勘違いされ、敬遠する人も少なくない。「ワインより少し度数が高い程度で飲み易いことを説明しながら地道に広めていきたい」と佐藤社長は語る。日本酒バーも経営する同店では、地酒のブームに加えて、スパークリングタイプ、日本酒をベースにフルーツフレーバーを加えたリキュールなどの生産も盛んなことや、現地の創作料理を提供するレストランが取り扱い始めていることから、さらなる日本酒の市場拡大に意欲を燃やしている。

欧州基準の商品開発に期待

今後の展望については、商品を輸出したい日本側とEUの輸入規制との調整が不可欠だと推測する佐藤社長。輸入規制が厳しいEUでは、他国に比べ、使用している農薬、動物性食品等の関係で輸入できない商品が多く、欧州内の日系企業で製造された製品に日本産食材がおされている状況だという。また、EUでは消費期限を表示するのに対し、日本では、消費期限より短い賞味期限を表示するのが一般的であり、この期間の短さも輸入の際の障壁となりかねない。「これらの問題がクリアされれば、輸入したい食品はたくさんある」と語る佐藤社長が大きな期待を寄せるのは、日本とEUのEPA締結による輸入拡大と、輸出を前提に開発製造される商品の増加である。

tokyo-ya
Av del Presidente Carmona, 9, 28020 Madrid
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