日本産食材サポーター店インタビュー SushiCo (カラムシュ店)

アジア料理レストランチェーンのSushiCoカラムシュ店は7年前にオープンした。カラムシュ・エリアはイスタンブールで最も美しいマリーナの一つと言われるカラムシュマリーナに近接し、周囲には高級住宅地が広がる地域だ。19世紀後半にはすでにイスタンブールで人気なエリアの一つだったと言われ、現在は有名レストランやカフェが立ち並ぶ。

SushiCoは、20年前にトルコで初めてアジア料理ビジネスを開始したレストランチェーンとして知られ、現在はトルコ全土で37店舗を展開している。また、マケドニア、コソボ等にも展開するトルコ最大のアジア料理チェーンであり、日本料理だけでなく、中華料理、タイ料理も取り入れた豊富なメニューを提供している。このカラムシュ店は、心地よく、洗練された雰囲気づくりを目指しており、モダンな内装と店内中央の大きな寿司カウンターが特徴だ。SushiCoのゼネラルマネージャーであるオズカン・ケスキン氏は「このレストランは他のレストランの見本となっている。この寿司カウンターによって、日本文化の心を表現している」とカラムシュ店に込めた思いを語る。店内ではトルコのテレビ・ドラマの撮影でもたびたび行われているようだ。

SushiCoに日本食文化をもたらしたのは、創業当初より勤務するエグゼクティブシェフの星野氏だ。英国の日本食レストランでの勤務経験があり、現在は日々各店舗をまわりながら、その経験をシェフやスタッフに伝えている。「私たちは、星野氏と唯一無二の関係を築いている。この街で長く暮らしている星野氏は、日本料理のシェフでありながら、SushiCoのエッセンスはもちろん、トルコ文化も理解している。」とケスキン氏は信頼関係の強さを語る。星野氏は毎週のように、各店舗でスシワークショップを開催し、大人向けだけでなく、子供にも日本の食文化を伝える活動をしている。

2011年、ビジネス拡大に伴い、SushiCo は各店舗で使用する食材を世界中から仕入れる食材調達会社Bimak食品を設立した。現在、SushiCo全体で使用する食材の約7割はこのBimak食品を通じて調達している。「私たちは、価格はもちろん重要だが、それ以上に食材の品質を重要視している。私たちがアジア料理ビジネスという挑戦を始めた際、顧客に提供したいと思えるアジア食材を手に入れることは本当に難しかった。輸入業者に食材の調達を頼らざるを得なかったためだ。しかしトルコには『自分たちが食べないものを、人に与えるな』という言葉があるとおり、私たちはこの状況を変える必要があった。Bimak食品の設立により、私たちは自分たちの判断で、最高の食材を仕入れることができるようになった。」とオズカン氏は食材への思いを語る。こだわりは輸入食材に対してだけではない。トルコは農作物や畜産物が豊富であり、肉、野菜など基本となる食材はトルコ国内で調達しているが、現在、仕入れている鶏肉はエーゲ海地方から仕入れている「サクラ・チキン」だ。これは日本企業がトルコで生産しているものであり、顧客からは高い評価を受けているという。

SushiCoは国内外からこだわりの食品を仕入れ、半年ごとにメニューを見直しながら、保守的とされるトルコ市場に新しい提案をし続けている。

2019年、顧客にさらなる価値を提供するため、320年の歴史を持ち、世界各国のレストランで評価されている柴沼醤油の直接輸入を決断した 。現在、世界で約4600店ほどの日本産食材サポーター店認定店があるが、トルコは輸入規制が厳しく、トルコで認定を取得したのはSushiCoが初めてである。この取り組みは、単に料理の品質を向上させるだけでなく、今後さらに拡大するであろうトルコ市場における日本の食文化の発信という面でも重要な役割を担っていくだろう。

SushiCoには彼らの20年の思いが詰まったメニューがある。「イスタンブール・ロール」だ。このロール寿司は登場すると瞬く間に人気メニューとなった。中にエビ天ぷら、アボカド、マヨネーズ、キュウリ、マサゴが入り、外はカリカリに揚げたサーモンで包まれ、照り焼きソースがかかっている。このロール寿司の特徴は提供前に一度揚げることだ。ケスキン氏は、これがトルコにおける日本食文化の定着の第一歩だと話す。「トルコではそもそも生の魚を食べる文化はなく、現在でも生魚をためらうお客様は多い。そんな方でも安心して日本食文化を楽しめるよう、私たちの文化も取り入れた新しいメニューを作った。この素晴らしいロール寿司が、カルフォルニアロールのように、世界中に広がっていくことを願っている。

（2020年取材）