日本産食材サポーター店インタビュー Shin & Furoshiki Store

ブラジル・サンパウロ市の目抜き通りのパウリスタ大通りに2017年に誕生したジャパン・ハウスは、日本国外務省が戦略的対外発信の強化の一環で設置した拠点である。パンデミック以前の2020年2月までは来館者数200万人を記録するほど、すっかり市内の主要文化施設の一つとして定着している。そうした拠点機関の中には、親日派だけでなく、裾野拡大に向けた日本に関する様々な情報提供に加え、レストランやカフェなどが設置されており、その中に、地方の魅力などを取り揃えたショップとしてShin & Furoshiki Storeが店を構えている。オーナーのサンドラ深田氏（日系三世）は店の名付け親でもあり、日本の真実を表現する品物を揃えることを運営方針としている。Shin とは、正に「真」なのである。取扱商品数は少ないが、品質とデザインにこだわりを見せる。飲料（酒類も含む）、食器類、書籍、風呂敷、布巾などが主な販売商品である。なお、飲料関係では日本酒、焼酎、梅酒、日本産ウィスキーとお茶が棚を飾る。

「ブラジル人の間では日本酒がブームで、多くの銘柄がブラジルに輸入されている中、製造元の蔵元などを調べて購入する人たちが増えている。若者は梅酒や柚子酒に着目し、和風テイストのお酒を求めているので、これからもこうした商品を発掘して取り扱いたい」と語る深田氏は、自身で日本に赴きトレンディな品物を調査するだけでなく、日本在住のコラボレーターからの意見を反映することで、常に新鮮な品揃えで来館者の心を掴み、飽きさせないよう心がけている。このショップは、ジャパン・ハウスの展示会場の延長にあり、解放的な空間の中に設置されていて、喫茶カウンターと図書閲覧コーナーに隣接した恵まれた環境にある。まさしく建築家隈研吾がデザインした「自由な表現を楽しむ空間」そのものである。店員も日本のファッションを意識する着こなしで客を迎える。「販売をするのが目的ではなく、品物を手に持って触ってもらい、体感していただくことから始まります」と深田氏は品物だけでなく環境づくりからスタッフを教育している。

Shin & Furoshiki Storeはジャパン・ハウス開設と同年の2017年12月5日に開店、5年を迎えるが、新型コロナウィルスのパンデミックが始まった時の2020年3月から1年間は対策強化宣言のもと閉店となり、その後の一年間もジャパン・ハウス入館者は限定され、来客は激減した。その間は、SNS発信によりオンライン販売を開始し、対外発信拠点としての役割を果たしてきた。2022年後半からやっと通常通りの営業に戻ることができた。客層はジャパン・ハウスが企画する展示などを観覧しに来る人たちで、圧倒的に日本文化ファンである。また、ジャパン・ハウスへの入館は無料なので、気軽に入れるというメリットがある。人気商品は何といっても日本酒で、販売の30％を占める。次にお茶（抹茶、煎茶など）である。商品の宣伝やマーケティング対策は、まさに「人と人との触れ合い」に限るそうである。「商品を手にしてその触感を体験してもらうことが肝心」と深田氏は説明する。店のモットーである「五感を通じて日本を紹介する」に相応しい体制である。

日本産商品を取り扱うにあたっての問題点は、輸入通関に時間がかかることである。ブラジル政府も輸入通関に関する電子システムによる手続きの迅速化、業務の分散化など様々な努力をしているが、実態は「商品が港に到着しても、検査に至るまで倉庫で止まっている時間が長く、また検査を通過してからも商品が店にたどり着くまでも更に時間がかかる」と店主は語る。「特に酒類の検査は厳しい」と嘆く。深田氏の希望としては、ブラジルの消費者側が求める商品の本格的な調査を行い、日本の酒造・輸出業者、ブラジル側の輸入業者と配給・小売業者（ネット販売も含む）とその結果を共有し、タイアップを強化することである。通関の遅延が生じても、当該店舗の棚に並ぶ日本産商品の品質、デザインには類がない。「日本産の商品には伝統と歴史が守られており、工芸や芸術に近い香りが漂う」と深田氏は語る。

2023年に向けての新企画は日本の47都道府県からの郷土特産品を展示販売することである。「日本の粋と郷土文化の豊かさをブラジル人にも知ってもらいたい」と深田氏は意欲を語った。