海外における日本産食材サポーター店認定制度

日本産食材サポーター店インタビュー 江戸前松木(Edomae Sushi Matsuki)

海のないヨーロッパ諸国に江戸前鮨の技法を使って
本物の鮨を提供する

所在地:ブラチスラバ(スロバキア)

旧市街の中心で本格的な江戸前鮨を味わう

スロバキアの首都ブラチスラバの旧市街の中央広場からすぐのところにEdomae Sushi Matsukiはある。建物の奥まったところにあるため、ほとんど気づかれず、隠れ家的な雰囲気がある。地下へ通じる階段を降りると、エントランススペースには日本庭園とワイナリーを融合させ、日本とスロバキアの友好を表現している黒と白のモノトーンの石畳がある。アーチ型のレンガ造りの壁に、かつてのワインセラーの名残が残るが、奥に進むと見事な檜のカウンターが見える。定員8名のカウンター席と、他に畳敷きの個室があるだけの小さな店内だ。

2019年6月6日に、(株)Most(モスト、本社:大阪)の代表取締役である鈴木健人氏と飲食人大学代表取締役である松本篤氏が、「海のない国に本格的な江戸前鮨を広めたい」という強い思いで開業した。Mostとはスロバキア語で「懸け橋」という意味で、同国に滞在経験の長い鈴木氏が、日本とスロバキアの懸け橋になろうという思いで設立した。同社は、江戸前鮨松木のレストラン事業の他、日本の食材の輸出、スロバキアワインの輸入、海外店舗進出支援の業務を行っている。

江戸前鮨

昼夜とも完全予約制で、コース料理のみを提供している。前菜から始まって、刺身盛り、握り鮨、焼き物、ケラ焼(卵)、汁物、甘味という構成だ。

その日に仕入れた魚介は、江戸前鮨の技法である「漬ける、締める、煮る、炙る」などで一工夫される。魚介は欧州だけでなく、日本や他の国からも仕入れている。日によってネタにばらつきが出るため、素材のよさを引き出すのは真剣勝負だ。さらに、酢飯に理想的な福井県産のお米を使っており、味に妥協はしない。魚介と相まって供される握り鮨は、海のない外国にいることを忘れてしまうほどの絶品だ。

鮨のお供となる飲み物は、現地の人には日本酒も好まれるほか、ワインやシャンパンなども好んで飲まれている。

スロバキアや日本のメディアから取材も

松木の江戸前鮨を支えるのは、シェフの永澤圭祐氏とスロバキア人のアシスタントシェフのペテル・ホルバート氏、サービスマネージャーの竹内和音氏。永澤氏とホルバート氏の二人は日本の「飲食人大学」の寿司マイスターコースの卒業生で、永澤氏はその後、日本のミシュラン掲載店で修業、アメリカで勤務の後、シェフとして同店に迎えられた。お客は3割が日本人、7割がスロバキア人を含む外国人。ほんものの味を伝えるという意味で特に大きな宣伝はしていないが、スロバキア国内の口コミで江戸前鮨ファンは徐々に増えており、最近は、スロバキアの大手メディアや日本のメディアから取材を受けたという。

ほんものの味を伝えたい

鈴木氏によると、数年前からスロバキアではSUSHIブームが起こり、アジア人や現地スロバキア人経営のレストランやスーパーなどでも、SUSHIが販売され一般の人にも知るところとなった。ただし、サーモンやマグロを切って載せただけのものが多く、日本の寿司とは似ても似つかないものであったため、ほんものの味を知ってもらいたいという思いで開業を決意したという。江戸前鮨松木の握りはさまざまな種類の魚介が供されており、現地の人のSUSHIの認識を一変させるに十分だ。

開店準備は、同国で居酒屋を経営した経験があったため、まずまずスムーズに物事が進んだそうだが、それでも内装工事などで遅れがあったという。最高品質の畳や檜のテーブルを使って個室を作ったが、お客はカウンター席でシェフが握るところを見るのが好きなため、ほとんど使われていないのは誤算だったという。

おむすび専門店もオープン

2019年11月には、日本産のお米の美味しさを伝えることを目的とした、OMUSUBYをオープン。こちらはおむすびを中心とした日本のファーストフードスタイルの食事を提供しており、手ごろな価格で、おむすびセットやお好み焼き、オムライスや和菓子などを提供している。今後について鈴木氏は、「文化遺産である日本食をきちんとした形で海外に伝え、将来、自分のように海外に出た日本人が日本を誇れる環境を作りたい」と抱負を述べた。