海外における日本産食材サポーター店認定制度

日本産食材サポーター店インタビュー ILOLI

モロッコで愛される和のテイスト

所在地:カサブランカ(モロッコ)

中東・北アフリカで高い評価を得る和とフレンチのマリアージュ

モロッコ最大の商業都市カサブランカ(人口約330万人)には和風レストランが多数あるが、地元で長く愛されている和食レストランがILOLIだ。2015年以降、世界のレストラン格付けランキング「La LISTE」(ラ・リスト)*の世界のレストラン1000の常連で、今年2022年には中東・北アフリカ50ベストレストラン(The Middle East & North Africa’s 50 Best Restaurants Academy**)にも選ばれた。店名はお客様と店のスタッフが集う日本の囲炉裏端をイメージして決めたという。スペルからイタリアンと間違えられることもあるそうだ。店舗は木と石を基調としたモダン和風な内装で、カウンター越しにキッチンが見え、テラスや2階席もある。 ILOLIは、大西洋の鮮魚をフレンチの調理技術で和風に仕立てた料理が特徴だ。2013年の開店以来店舗の従業員40名をリードするオーナーシェフ古川祐介さんと奥様のブアヤードノエルさんは、店のこだわりを日本と外国の食文化の融合、そして地産地消と話す。これまでに訪日グルメツアーや沖縄ミュージシャンを招いたコンサート開催など、「食」以外でも積極的に相互文化交流を展開している。新しいビジネストレンドの取入れにも積極的で、筆者が初めて訪問した際、メニューがQRコード化されているのには驚いた。新型コロナ感染が気になる今、第3者と接触の機会を減らすいいアイデアだ。

舌の肥えた地元顧客が店を支える

メニューには地元産食材を使った前菜やメインディッシュの他、スシや餃子、どんぶりなど日本風の一品も並ぶ。地元でとれたマグロのカルパッチョ、トリュフ醤油や麺も自家製の海鮮ラーメンなどが人気という。日本食材を使用したメニューとしては、昆布や鰹節で丁寧に出汁をとった海老しんじょや海鮮サラダがお勧めとのこと。シェフは「タジンやクスクスなど伝統のモロッコ料理や、フランス、スペイン料理等を日頃口にしている舌の肥えたモロッコのお客様にとって、昆布出汁や昆布締めといった繊細な旨味というのは新鮮に映るようで、新しい味を知っていただけるのが和の食材を使うメリット」と話す。
「フレンチ三ツ星レストランの流れをくむ本物の味」「外国旅行した気持ちになる」「(地元にはない)オープンキッチンが新鮮」など来店客の評価は高く、40~50歳代が中心で、9割は地元カサブランカなどのモロッコ人、その他、フランス人や日本人など外国人にも利用されている。7割はプライベートでランチ時間はビジネス客が多い。

日本食材の調達に苦労

モロッコは日本食材の普及が進む欧州に隣接しているにもかかわらず、関連食材の普及はほぼゼロに近く、古川シェフは日頃から調達に苦労している。フランス経由で入ってくる食材はあるにはあるが、業務用としては価格が折り合わない。そこで、調味料を自身で作ったり代替野菜を地元で発掘、栽培したり、日本の味をモロッコで提供するため苦労は尽きない。野菜ならミョウガやれんこん、ゴボウ、山芋、山葵、調味料だと味噌や魚醤、日本米や海苔など欲しいものはたくさんあるという。

日本ブランドアルコール飲料の普及に期待

モロッコはイスラム教国だが飲酒には寛容な側面を持ち、古くから赤白等のワインや「カサブランカ」ブランドのビールなどを生産、消費している。商都カサブランカをはじめ、国際観光都市マラケシュや古都フェズ、ジブラルタル海峡に接する国際商業港タンジェなどには欧米を中心とした観光、ビジネス客が多数訪れ、限られた店舗であるがアルコール飲料が提供されている。ILOLIでは、ワイン(フランス、モロッコ、イタリア、スペイン、カリフォルニア)やウイスキー、ビール等を用意、柚子を使ったカクテルは人気だ。日本ブランドのウイスキーや日本酒も種類は少ないが扱っており、古川シェフは「ビールも含め日本産アルコール飲料は当地でも受け入れられると思う。食品同様輸入は簡単ではないが将来的に品ぞろえを増やしたい」と期待を述べた。